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傾奇者
「いいとこだね」
きちんと一階ロビーに管理会社が常駐しているコンシェルジュ付きのオートロックのマンションである。
「何にもないんだけどね……」
部屋には最低限の家財道具だけで、テレビすらない。掃除は週に一度家政婦さんがやってくれる。
「料理はしないの?」
綺麗なキッチンを眺めながら、志乃が訊ねてくる。
「出来ない。志乃くんは出来るの?」
「まあ、向こうのお婆ちゃまに習った地元料理なら、日本人にはちょっと辛いかも……」
「食べてみたい!」
「ああ、そういえば屋台ご飯も平気だったものね。今度作りに来て良いの?」
「うん……」
向き合って、身体が触れている。手を絡め合せる。
「さっき、嫉妬してくれて嬉しかったな……」
少し背が低い志乃は、僕の肩に額を寄せる。
「嫉妬、だよねやっぱり……晴太郎さんとは何をしてたの?」
「エッチな事、してたの」
「小さい頃に?」
「そう、もう対象外かと思ったけどそうでもないのかな、単に誂ってただけかもしれないけどさ……」
「犯罪だよね……?」
「そうだね、でも、僕も助けられてたから、鬱陶しいけど晴太郎お兄さんの事は嫌いじゃないんだよ。初めて賀朝お兄さんに会った日、風邪を引いた子の代役で急遽舞台に上がった。舞台の後の僕は困るくらい興奮していた」
「それは舞台に緊張したんだよね……?」
「そうかもしれないけど、僕はペニスがジンジンして、困ったのが現実としてあった。晴太郎お兄さんが助けてくれた。それだけ。一人で落ち着かせる事も出来るって言われたし、教えてもらったけど」
「僕はあのとき、志乃くんのお兄さんにならないと!と思っていたんだよ……
「ごめんね、変態で……僕は賀朝お兄さんに触りたくて、触ってほしくて、見てほしくて大変だった。今もね」
ぐりっと押し付けられる反応したものに、腰が砕けそうになる。
「ねえ、約束破っても良い?」
「うん……」
「祥明さん、僕と結婚して……」
「先に進んでる……」
「うん、でもやっぱり結婚したい。誰にも渡したくない」
「僕、誰とも付き合ったことないから、先に付き合ってみたい」
「しょうがないな……祥明さんは恋人とどんな事をしたいと思ってた?」
「水族館に行く?」
「行こう」
「記念日とか、イベントとか……」
「あと、セックスね」
頷いておく。
極薄い麻の夏着物と襦袢を撫で回されると、カサリとした刺激的な感覚がする。襟から手が滑り込んで来て、胸を弄られた。
「しのくん……気持ちいい……」
「そうだね、凄くやらしい顔になってる」
ふるふると腰が揺れ、力が抜けていく。力持ちの志乃に腰を抱かれたまま、ベッドルームに向かう。
「あ、お稽古後で……シャワー……」
「良いから……先に一回」
「ん……」
裾をはだけさせて、志乃の顔は膝の間に吸い込まれて行く。強制的に吸い取られる様に激しく動かされて、喘ぐ間もなく出してしまった。
「はやっ……」
「うぅ……だって……」
「いいの、嬉しいから」
「志乃くんのもする」
ズボンを下げて、咥え込む。先を咥えるだけで精一杯だ。
「意地悪したくなる……」
して欲しくなって、頷いてしまう。
「されたいの?」
頷くと、頭を掴まれて、喉の奥にグイッと押し付けられ、息が止まり、喉の奥がグリュリと蠢く。
喉が何度か異音を立てたら緩められ、すぐに再び押し付けられる。それを何度も何度も繰り返されて居るうちに、頭がぼうっとした。酸欠なのか、苦痛だった物が急に、酷く生々しい肉の溶け合うような感じがする。
自分の喉が自分の本体の様だ。頭が空っぽになり、口を犯されている事に興奮した。志乃の精液が土堀と溢れ出て、口から唾液と共に流れ出ると、いったばかりのペニスがガチガチになっていた。
「やっぱりシャワー浴びる……入れてほしいから……」
「ん……一緒に浴びよう」
「それ……気持ちよくなるから……」
志乃は、中を洗うと言って指で掻き回してくる。
「準備も楽しめた方が良いと思うよ?」
「そうなの?」
「そうそう」
「そうか……」
お尻にシャワーの口を当てて、お湯が流し込まれる。
「おトイレでだしておいで」
言われるがままに、往復を何度か繰り返す。
「もう良いね……」
「あ、まって、まってよ、コンドームしないと」
「またない」
「あっやあ……」
ズルリと押し込められた。コンドームが無いだけで、こんなに入りやすいのか、それとも念入りに洗って緩んだのか、ローションが水を吸ったのか。
グチャリグチャリと音を立てながら、硬い志乃のペニスが抜き差しされて、脳天から気持ちよくなる。脳が直接犯されている。襲いかかってくる絶頂感に、悲鳴を上げていた。風呂場に反響して、うわんうわんと耳をしびれさせる。立っていたはずなのに風呂場の床に崩れ落ちて、志乃に縋り付く様に伸し掛かり、獣の様に腰をふる。
「あぁ……淫乱になっちゃった……」
志乃が絞り出す様に呟くので、もっと淫乱になりたくて、志乃の手を胸に誘導して、ニヤつく唇に吸い付く。口の中も犯されて、満足すると、急に耐え難い程の気持ち良さに襲われて全身に力が入ると、中でも一層硬さを感じてゴリゴリと擦られて、ドボドボと熱が注がれる。
「逆上せる……」
シャワーを止めて、寝室に転がり込んで、そして、また抱き合った。
「絶対結婚する。絶対結婚する。誰にも渡さない絶対渡さない」
志乃はそう繰り返しながらめちゃくちゃに犯してきた。
その執念深い物言いに、愛を感じていた。
「もっと言って……」
「絶対離さないから……」
「うん……離さないで……」
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