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第5話

「……コレ、お前に使ってもいい?」  予想に全く反して、風吹はカバンから円筒状の物を出してきた。小さめの水筒の様な形をしている。上に(ふた)が付いていて、本体部分は透明で中身が見えるようになっていた。  それはどう見てもジェル状の何かだった。僕は何が何だか全く分からなくて、きょとんとした顔をすることしか出来なかった。 「……ええと、それは何? どこに使うの?」  僕の質問に風吹はちょっと言いにくそうに顔をしかめた。 「ローション。その……桜の尻の穴に使いたい」 「──」  僕は絶句した。お尻の穴……。そう言われて思い当たる事はひとつしかない。  さしもの僕も、世の中には男性同士で性的な事をする人がいることくらいは知っていた。詳しくはないけど、学校でもジョークの様に話すことがあったからだ。  僕の身体にもついている、そして今回悩みのタネにもなっている男性器というヤツを、相手の男性のお尻の穴に入れる行為もあるらしい。男性同士のセックス。風吹は僕にそれをしたいのだろうか? 「お前が嫌なら絶対しない。でも、これ使って指で前立腺刺激すれば、もっと気持ち良くイケると思う」 「え……っ。そ、そうなの?」  僕はまた、自分が恥ずかしくなった。風吹が……カッコ良くてみんなからモテて、望めば可愛い女の子といくらでもセックスくらい出来そうな風吹が、僕と〝したい〟と思うはずなどないのに。  あくまで風吹は、僕のためにローションを使おうとしているだけなんだ。どこで買ってきたのか分からないけど、お金だって掛かっただろう。オナニーすら満足に出来ない不出来な幼馴染の為に、風吹は一生懸命考えてくれたんだ。 「やっぱ嫌か? それなら……」 「う、ううん。大丈夫。使っていいよ」  僕は頬を赤くして承諾した。風吹にしてもらえると思うと、血が陰部に一気に集まるような感覚になる。 「……僕は、どうしたらいい?」 「できれば、仰向けで脚開いてほしい。うつ伏せでもいいけど、息が苦しくなると思う」  僕は頷いた。想像しただけで、それこそ穴に入りたいくらい恥ずかしい。でも風吹には今まで信じられないくらい世話になって来たし、その風吹の頼みを叶えられるならいいと思った。どっちにしても、それは僕の為に風吹が考えてくれたことでもあったからだ。 「で……電気は消してね」 「ああ。でも豆球は点けるぜ。全然見えないと傷つけるかもしれないし」  僕はまた頷いて、ベッドに横になった。風吹がリモコンで電気を豆球に設定する。  薄い暗闇の中、風吹の手が僕のスエットのズボンを脱がせた。ボクサーパンツの上から、なんだか愛しいものでも触るみたいに僕の陰部を撫でる。 「もう硬いな。感じるの上手くなってる」 「……んっ……」  段々息が乱れてきた。風吹は僕の下着も脱がせる。 「寒くないか? 上も脱がしていい?」 「さ、寒くないけど……恥ずかしい……」 「こんな言い方嫌かもしれないけど……桜、すごく綺麗だ。可愛いよ」  心臓がバクバク脈打つ。僕の上着を脱がす風吹に逆らえない。こんなに痩せっぽちで、筋肉もなければ女性の様な贅肉の柔らかさもない、僕の身体のどこか綺麗というのだろう。  風吹の両手の指が、僕の両方の乳首をキュッとつまむ。気持ち良さに喘いだ。  今日の風吹は、今まで一度もしなかった事をした。乳首から手を放し、右手を僕の陰茎に持っていく。そして刺激を求める僕の乳頭を口で吸い上げた。 「あっ……ンッ……」  声を我慢するなど不可能だった。風吹は今までずっと、僕の耳たぶや首筋に唇を這わせたり舌で舐めたりすることはあったけど、それ以外の場所に口をつけることはなかった。  人間の身体の中でも敏感な部位である乳首を吸われたり舐めたりされることが、こんなにも気持ちのいいものだと思わなかった。僕はただただ、風吹の唇と手の感触に喘ぎ続けるしかなかった。 「……脚、開けるか?」  風吹自身も、息を乱しながら僕に訊いた。僕は快楽と緊張で震えながら脚を開いた。 「脚を曲げてから上にあげて。なるべく……良く見える様に」  風吹のアドバイスに従って、死にそうな思いで脚を大きく開いた。何かを確かめるみたいに風吹は指を僕のお尻の穴の周りに這わせた。思ったよりも快感が強く、無意識に腰が浮いてしまう。 「痛かったり、嫌だと思ったらすぐ止めろよ。絶対、桜に苦しい思いさせたくないから」 「う……うん。分かった」  パチン、とローションの蓋を開ける音がした。僕は荒くなった息をどうにか抑えながら目を閉じていた。ヌルヌルした感触の液体が脚の間に垂れてくる。風吹の指がローションを優しく広げていく。  お尻の穴の緊張をほぐすように、ローションを指でそっと撫で付けていた。それを何度も根気よく繰り返され、僕は快感で脚の感覚がなくなりそうだった。 「入れるよ。まず小指」  風吹は律儀(りちぎ)に説明してくれる。僕は必死で頷いた。ローションの効果なのか、風吹の小指はスルッと僕のお尻の穴に入って行った。

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