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第21話

「──っ」  軽い圧迫を感じて、僕は息を止めた。僕は風吹が入れるのかと思った。でも風吹は、何度か自分のものを穴に押し付けただけで、また僕の上へ被さって来た。 「ごめん、いつまでもその態勢じゃキツイよな。手、放していいよ」  僕はゆっくり脚から手を放した。気持ち良さにばかり集中していたから感じてなかったけど、脚の筋肉が固まってしまったようにギシギシだった。 「楽にして。大きく息吸ってから吐いてみな」  スーッと僕は息を吸い込んで、ゆっくり吐いていった。曲げていた脚を段々に伸ばしていく。熱いような、痛いような感覚が徐々に楽になっていった。 「はぁ、ふぅ」 「痛かったな。悪い」 「だい……じょぶ」  僕は深呼吸を繰り返した。次第に痛みがなくなり身体が自分のものに戻った感じがした。  風吹はベッドヘッドに手を伸ばす。手に取ったのは表面に水滴がついたペットボトルだった。中身は普通のミネラルウォーター。  風吹は上を向いて水を飲んだ。ゴクゴク喉を鳴らしている。口元からあふれた水が、風吹の首を伝ってツーッと落ちて行く。僕との(から)()いで汗をかいた身体、筋肉質で均整の取れた美しい風吹の身体を、一筋の水が伝い落ちて行く。それは(ほう)けて見とれてしまうほど綺麗だった。  風吹は水を口に含むと、僕の方へ顔を近づけた。重なり合った口から、僕の口の中に水が流れ込んでくる。僕は風吹から口移しで水を飲んだ。たくさん汗をかいた身体に、水が浸みわたっていく。  風吹がペットボトルをベッドヘッドに戻す。喉が潤って人心地ついた僕の前髪を、風吹が指でかき分ける。露になった僕のおでこに風吹はキスをした。 「そのまま楽にしてな。感じてるだけでいいから」  風吹は今度、僕の唇にキスをした。それから唇で僕の鼻の頭や頬を辿って行く。耳たぶを甘噛みしてから、首筋へと移っていった。首を丹念に舌で舐めてくれる感触が気持ち良くて、僕の息はまた早くなってくる。  刺激の強い場所ではないから、急激な興奮じゃない。でもゆっくり高ぶっていくのが心地いい。風吹からの深い愛情も感じられて幸せだった。  風吹はまるで、僕の全部を舌で味わいたいとでもいうように、全身に唇と舌を這わせた。背中も、指先もつま先も、すべてにキスを受けた僕の身体は隅々までとろけたようになる。感じ過ぎて、声を上げ過ぎて、息も絶え絶えなはずなのに、幸福で満たされていて涙が流れた。 「桜、もうちょっと腰上げて」  いつの間にか四つん這いになっていた僕の背中側から腕を回し、片手で僕の両方の乳首をクッ、クッ、と押しながら風吹が言った。僕がお尻を付き出すように上げると、露わになった穴に風吹の指が出入りし始めた。ローションをたっぷり垂らされた僕のお尻の穴を風吹の指が柔らかくこなしていく。 「あっ、あああっ、あんっ……んっ、んっ、ん──っ」  風吹の指が一本ずつ増やされ、三本が差し込まれた。その指が押したり引いたりを繰り返す。胸に当てられた指先は(たく)みに僕の乳首を刺激し続ける。僕は快楽の声を上げる他なかった。 「ふ……ぶき、ふぶき、ぼく……もっ……」 「ああ。もう俺も限界かも」  風吹は僕の背中に舌を這わせながらお尻からそっと指を引き抜く。そして僕を仰向(あおむ)かせ、また脚を大きく開かせる。  お尻に少量のローションが足された。風吹が一旦僕から離れて、すぐに僕の足元に戻った。ピッという、ビニール状のものが開けられる音がした。ピチ、とゴムが伸びる音。僕は乱れる呼吸で胸を上下させながら、風吹が来るのを待った。 「……桜。嫌だったら絶対止めろよ」  風吹はそう言うと、ペニスの先端を僕のお尻の穴に当てた。手でそっと揺すりながら僕のお尻に風吹が挿入される。「痛くないか?」と乱れた声で風吹が訊いた。 「う……っん。……たくない」  風吹は身体をグッと前に動かした。僕の穴が押し広げられていく。僕の意思に反して力が入ってしまう両脚を、風吹の手が優しくさすってくれた。 「……ハッ……」 「あ……っ、はぁっ、あ……ふぶ……き、あああっ」  風吹が動きを止めた。僕の中は今まで感じた事のないものでいっぱいになっている。ちゃんと入っただろうか。風吹が、僕の中に。 「さ……くら。桜……!」  風吹が僕を抱きしめる。僕の頭の横側から枕に顔を埋めて、ビクッ、ビクッ、と震えた。僕の中に入っている風吹のものが、何度か収縮するのが感じられた。  風吹は不意に起き上がると、後ろへと身体を引いた。今まで僕を満たしていたものがゆっくり引き抜かれる。風吹は僕から出て行ってしまった。 「ふ、ぶき。風吹。やだ。やだよ。まだ行かないで。僕の中にいて……!」  またピッとビニールを斬る音と、ゴムを伸ばす音がした。風吹は僕の上になり、再度身体を前へと移動させる。  僕の中は、また大きなもので満たされた。さっきと同じくらいの大きさと強さを持っている。僕は軽い苦痛と安堵(あんど)を同時に感じて、甘い吐息をふぅっと吐いた。

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