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 今、声が聞こえたぞ? なんかこう、可愛い声が!  俺は即座に、悪魔君を下ろしたソファを振り返る。声が聞こえたのは、確かにソファの方からだったのだから!  振り返ると、ソファの上で寝そべっていた悪魔が身じろいでいる姿を視認できた。やはり、先ほどの声はこの悪魔君の声で間違いないらしい。 「ゼロ太郎、ゼロ太郎。起床だ、目覚めだ、グッドモーニングだ」 [モーニングではありませんが、そうですね。お目覚めのようです] 「やっと答え合わせだな。さぁ、この子はいったいどんなタイプの悪魔っ子なのかなぁ~っ?」 [さも私も答え合わせを待ち望んでいた、といった言い回しはやめてください]  相変わらずゼロ太郎は冷たいが、それはそれだ。俺は冷蔵庫の前からソファの近くへと移動し、ワクワクと心を弾ませながら、悪魔君の第一声を待つ。  ソファに寝そべったまま、悪魔君はゆっくりと瞳を開く。  おぉっ。瞳の色は青色なのか。これはまた、美少年の輝きを宿した瞳だな。百点の二乗をプレゼントしよう。  静かに興奮する俺に気付いたのか、悪魔君の綺麗な瞳が俺を映す。それから、パチパチと数回の瞬き。  そして、悪魔君は口を開いて──。 「──キミ、誰。ここは、どこ」 「──まさかのクールタイプ、だとッ?」  俺の想定では【目と目が合った瞬間にラブロマンスが始まる甘デレ悪魔っ子】か、若しくは【なぜか初対面なのに嫌悪感剥き出しからラブロマンスを始める悪魔っ子】のどちらかだったのに!  ここにきて、まさかの感情薄めクールタイプ系悪魔っ子だったなんて! そんなの、そんなのは……! 「悪くない! むしろ、アリ!」 [──主様。残すは、主様から発信指示をいただくだけですが] 「──ナチュラルに自首を勧めないでッ?」  ゼロ太郎がポコンと、空中に電話の発信画面を表示させる。番号が警察だ。酷い。  いや、この際ドライすぎるクールタイプはスルーだ。俺は目覚めたばかりで混乱中と思われる悪魔君に近寄り、ソファの前に座った。 「初めまして。俺は、追着陽斗。君、道端で倒れていたんだよ」 「そう。なら、ここは?」 「ここは俺が借りているマンションの一室だよ。だいたい一年半前に引っ越してきたんだけど、綺麗な場所でしょう? 建ってすぐに引っ越してきたからさ」 「そうなんだ」  いやいや、マンションの築歴とか話している場合か! 「君、おうちは? それとも、魔界からこっちに来たばっかり?」 「うん、そう。魔界から人間界に来て、ウロウロして……」  悪魔君が、言葉を区切ってすぐに。『ぐうぅ……』っと、お腹の音が鳴った。 「お腹が、空いて。だけどお金がないから困って、少し眠くなった。……ってところまでは、覚えてる」 「うん、典型的な行き倒れだね」  なるほど、ヤッパリ無一文の放浪悪魔だったか。保護して正解だったな。 「先ずは、ご飯にしようか。待ってね、もうすぐピザが届くから──の、前に。なにか飲み物でも用意しようかな。ちょっと待ってて、用意するから」 「うん、分かった」  悪魔君は頷き、上体を起こす。俺はすぐに立ち上がり、冷蔵庫に向かった。  ……が、先ほども言った通りゼリーしか入っていないので。俺は行き先を流し台に変え、コップに水道水を入れたのであった。

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