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 お洋服騒動は秘密裏に処理され、俺は今、カワイと一緒にお寿司をテーブルに並べていた。 「昨日言った通り、今日はカワイとお祝いをしちゃうよ~っ。さぁ、カワイ! 遠慮せず、好きなだけ食べてね!」 「分かった。ありがとう、ヒト。ゼロタローも、デマエを呼んでくれてありがとう」 [いえ。【カワイ君のため】ですからね。どういたしまして] 「うぐぐっ!」  ゼロ太郎、ちょっと根に持ってるな? 仕方ないじゃないか、死活問題なんだから。  俺とゼロ太郎のやり取りをなにも知らないカワイは、テーブルに並んだツヤツヤのお寿司たちを見て、喜んでいた。……ように、見える。  悪魔の尻尾が揺れているのは、犬と同じで【喜んでいる表れ】って解釈でいいのかな。でも、ちょっぴりデリケートな部位の気もするから訊きにくいぞ。 「ところで、部屋でただ留守番してるのも暇だったでしょ? することが掃除だけっていうのも、つまんなかったよね。ごめんね、部屋になにも面白い物がなくて」  それよりも、今後の話だ。俺はカワイにお皿を用意しながら、話題を振った。  素直なカワイのことだから、てっきり肯定されるかと思ったのだが。 「ううん、充実した一日だったよ。掃除、楽しかった」  お皿を受け取りながら、カワイは首を横に振った。 「明日は換気扇の掃除と、寝室の掃除をする予定。……だよね、ゼロタロー」 [その通りでございます。可能ならば洗濯機と洗剤の使い方もお教えし、主様に代わって家事を学んでいただければと思っています]  なんという展望だ。ありがたいけど、申し訳ないぞ。  カワイはお寿司と一緒についてきたおしぼりで手を拭いた後、お寿司を選びながらさらに付け足す。 「リビングの掃除もするつもりだし、窓とかも掃除する。この部屋のことはボクに任せて、ヒトはお仕事ムリしないでね」 「カワイ……」  あれ、おかしいな。まだお寿司を食べていないはずなのに、鼻の奥がツンとするぞ。ワサビか? ワサビだよな? 「ありがとう、カワイ。正直、本当にメチャメチャ助かるよ」  仕事を言い訳にするつもりじゃないけど、なかなか家事って手が回らないんだよなぁ。まさに、渡りに船。カワイには本気で申し訳ないけど、でも、ありがたい。  両手を合わせて、夜ご飯とカワイに感謝を。……さて、俺もカワイに続いてお寿司を食べようかな。  カワイは初手でタコのお寿司を口に運び、その弾力に驚きながらもおいしそうに咀嚼をしている。ただお寿司を食べているだけなのに、可愛いなぁ。  なんて、頭の中をふわふわタイムにしていると──。 「──ヒトと指切りした、あの部屋は? 掃除しなくても大丈夫?」 「──んぐっふ!」  危ない! お寿司が喉に詰まるところだった! 俺は慌てて、コップに注いだ水道水を飲んだ。  ゴクゴクとお寿司並びに水を飲み、俺はダラダラと冷や汗をかきながら、カワイから目を逸らす。 「あー、いやっ、あの部屋、あの部屋ね~っ? あはっ、あはは~っ。あの部屋はね、俺が自分でどうにかするからっ。だから、カワイはな~んにも、ま~ったく気にしなくていいんだよ~?」 「そうなんだ。分かった、指切り続行だね」 「うんうんっ、続行続行!」  よ、よし! なんとか誤魔化せたぞ!  ゼロ太郎が心の中で『苦しいですよ、主様』と言っているような気もするけど、気のせいだ!

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