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明日までと言われていた作業を、なんとか日付が変わる前に撃退。俺は安全運転を心掛けながら、二十三時過ぎにマンションへと帰ってきた。
「ギリギリセーフッ!」
[いえ別にタイムアタック的なことはしておりませんでしたけどね]
俺の頑張りを文字通りそばで見ていたくせに、なんという奴だ! 相変わらずなツッコミ気質に、むしろホッとしてしまうではないか!
と言うわけで、帰宅だ。俺は飛び込むような速度で玄関からリビングへ直行。そして、椅子に座るカワイが俺を認識すると同時に、そのプリティーな体を抱き締めた。
「あっ、ヒト。おか──」
「ただいまカワイ! 今日も可愛いね! ありがとうっ!」
「うぐっ、苦しい……」
あぁっ、今日もスベスベで細っこくて可愛い! どうしてカワイはこんなに可愛いんだい? カワイだからさ! Q.E.D.だ!
「同じシャンプーとボディーソープを使っているはずなのに、どうしてこんなに違うんだろう? 石鹸? 石鹸の妖精さんなのかな? いい匂いがするよ、カワイ~っ!」
「それはたぶん、気になって食べちゃった缶詰めの匂いだと思う」
「だから桃の匂いがするんだね! カワイとマッチしすぎて気付かなかったよ!」
昼休憩の時は俺と一緒じゃないとご飯を食べない~くらいのことを言っていた気がするけど、そんな自由すぎるところも推せるよ! 任せて!
ほっぺ、すりすり。カワイは嫌がらずに、俺の奇行を受け止めてくれた。ほらね、ヤッパリカワイは天使なんだよ。す~りすりっ。
「ヒト、くすぐったい。イヤじゃないけど、くすぐったい」
「さり気なく俺を喜ばせる天才だね、カワイは。ありがとう」
「よく分からないけど、こちらこそ?」
頭をフル回転させた後に摂取するカワイ、最高です。
カワイを抱擁から解放し、俺は上目遣いで俺を見てくれるカワイを見つめた。あっ、すごい。存在がマイナスイオン。
カワイは椅子に座ったまま、チラリと視線を移す。テーブルの上にある缶詰めを見ているようだ。
「でも、ゴミをどうしていいのか分からない。だから、重ねたりまとめたりしちゃった」
そっかそっかぁ、ゴミかぁ。俺は胸いっぱい肺いっぱいにカワイを吸ったこともあり、一種のハイな状態に陥っていた。
──だから俺は、うっかりしてしまったのだ。
「あぁ、ゴミね。それなら、こっちこっち」
カワイを手招きし、俺はとある一室を案内する。
……そう。カワイを、案内してしまったのだ。
「えっ? ヒト、その部屋は指切り──」
──ガチャッ。
カワイが驚いたのと、ほぼ同時。俺は【ゴミの置き場】という情報だけで、脊髄反射のようにとある部屋の扉を開いた。
……そう。カワイと指切りをしてまで、隠していた部屋。
──またの名を【ゴミ集積所と化した一室】を。
「え? 俺と指切り?」
「えっ。この部屋……」
扉を開けて、最初に驚いたのはカワイだった。
それから、カワイが発した『指切り』という単語が妙に引っ掛かった俺が、一時停止。
そして……。
「──うわぁあッ! みッ、見られたぁあッ!」
ゴミがビッシリと詰められた部屋を、自らの手で開放してしまったのだと。
そう気付いた俺は、静かに驚くカワイ以上に驚いてしまったのだった。
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