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 と、いうことで。  翌日の土曜日、俺は【ある決断】を口にした。 「──そんなわけで、ジムに行こうと思う」  時刻は、昼過ぎ。完全に惰眠を貪っていた俺は、髪形を整えもせずに起床早々、カワイとゼロ太郎に宣言をしていた。  俺の朝兼お昼ご飯を用意してくれながら、カワイは小首を傾げる。 「ジムって、どんなところ?」 「そうだなぁ……。近所にあるジムは、手軽な料金で色々な機械を使わせてくれる施設だよ。運動とか筋トレとか、そういうのを安易な思いつきで行かせてくれるような場所かな」 [説明に少々ツッコミどころは見受けられますが、閉口しますね]  ツッコミを放棄された。なぜ。  でもまぁ、カワイには伝わったらしい。食卓テーブルに料理を並べてくれた後で、カワイは口を開いた。 「ボクも行ってみたい」  なんと、まさかの同行。カワイの希望を受けて、俺は椅子に座る。 「それは勿論、俺としては嬉しい申し出だけど。……でも、俺たち以外にも利用者さんは沢山いるよ? 人見知りとかしない? カワイ、大丈夫?」 「うん。楽しみ」 「だよねー。カワイは大丈夫だよねー」  さすが、ゼロ太郎と一緒と言えどスーパーやらホームセンターやら、未開の地に突き進めるカワイだ。正直、俺の方が初めてのジムにビビり散らかしている気すらしてくる。  頼もしさマックスなカワイは、フンフンとやる気に満ち溢れていた。思えば、カワイと一緒に運動なんてしたことなかったっけ。 「じゃあ、ご飯を食べて身支度を終えたら早速、行ってみよっか。折角運動するんだし、徒歩でも行ける距離だから歩いて行こう」 「うん、分かった。ヒトが寝癖を直している間にボクも準備をするね」 「ヤッパリ寝癖ある?」 「元気で活きのいい寝癖があるよ」  魚みたいな扱いをされてしまった。後で鏡を見てみよう。  とにもかくにも、これで今日の予定はバッチリだ。普段は休日に外出なんてしないから、なんだか新鮮な気持ちでもある。  ……もしかして、これは世間一般では『デート』と呼ばれるものなのでは? なんて、俺の心がモゾモゾッと蠢いたのは束の間。 [……ところで、主様] 「うん? ゼロ太郎、どうかした?」 [──ジャージ等の動きやすい衣類はお持ちですか?]  ……。 [いけませんよ、部屋着は。部屋着は、いけませんよ]  ……チラリ。  今日の部屋着は夏らしく、黄緑地のシャツに焼き肉のたれがかかったマンガ肉がプリントされ、柔らかいフォントで『でりしゃす』とコメントが添えられたデザインなんだけど……。  ……よし! 「──今日はジャージと靴を買いに行こう!」 「──おー」  ──なにが駄目なのかは全く分からないけど、とりあえず買い物だーっ!  俺の心は『デート』という単語で乱されるよりも先に、ゼロ太郎の指摘でザワザワだ。  確かに、こんなハイセンスな服でジムに行くのは憧れの的になってしまうからね。運動どころじゃなくなっちゃうかも。さすがゼロ太郎だ。配慮が行き届いている。  そんなこんなで俺が片手を上げて買い物を提案すると、ノリのいいカワイは無表情のまま片手を上げて、俺の案に乗ってくれた。

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