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 簡単に説明しますと、人工知能の定期点検は【ソシャゲの定期メンテナンス】みたいなものっす。  システムに不備がないかとか、不具合が発生していないかとか、あれやそれ。とにかくまぁ、地味な作業なんすよね~。  リビングのテーブルをお借りして、ひたすらにパソコンを叩く。まぁ、はい、地味な絵面っすね。  これが例えば、追着さんやカワイさんだったらどうでしょう? お二人はただ居るだけでその場が明るくなるような華やかさをお持ちなので、もしかするとパソコンを叩いているだけでも絵になるかもしれないっす。 「……ちなみに、追着さん。お仕事はなにを?」 「えっ、唐突ですねっ。入居した時と変わらず、事務職ですよ」 「なるほど。……ちなみにカワイさん、こちらの世界でパソコンには触れましたか?」 「うん。ゼロタローに使い方を教わったから、ブラインドタッチができるようになったよ」  負けたっすわ。完敗っす。ジブンみたいな地味なメンズがパソコンを叩いていても、それはただの陰キャっすよね。……うっ。言葉にすると、胸が痛いっす。 「カワイ、カワイ。なんだか大家さん、疲れてるように見えない?」 「ゼロタロー以外の点検もして、疲労しているのかも。飲み物用意するね」 「そうだね、そうしよう。ありがとう、カワイ」 「どういたしまして」  お二人がコソコソとなにかを話していますが、ジブンの耳には届かず。なので、カワイさんからの差し入れにビックリしたっす。 「エツ、お茶。ここに置いておくね」 「わざわざすみません~。ありがたくいただくっすね」 「今日はエツが来るって聞いたから、ケーキを作った。抹茶のチーズケーキだけど、エツは抹茶とチーズ、平気?」 「どっちも好きっすよ~。ありがたいっす」  前に『せいろが欲しい』って言われたから薄々気付いていたっすけど、カワイさんって料理が好きなんすね。追着さんが羨ましいっす。  おかげでホッコリした気持ちになったので、ジブンは作業を続行するっすよ。パソコンをパチパチッと叩いて、ゼロ太郎さんの点検を……。 「エツ、すごくすごい。なにをしているのか全く分からない」  と、作業を続けていると。抹茶チーズケーキを持ってきてくれたカワイさんがパソコンの画面を見て、そう呟いたっす。 「いやぁ。【趣味が高じる】とはよく言いますけど、それを褒められるのはちょっと照れるっすねぇ~」  カワイさんは一見すると感情が無さそうな印象を受けるっすけど、実はそうじゃないんすよね。買い物中のカワイさんと話していて知ったっすけど、かなり好奇心旺盛なんす。  今ジブンが使っているパソコンの画面はアルファベットやら数字にまみれているんすけど、そんな画面はなかなか見ないっすよね。目まぐるしく変わっていく画面がよほど興味深いのか、カワイさんは食い入るようにパソコンを見つめているっす。 「ヒトから『今日はゼロタローの定期点検』って聞いたけど、具体的にはなにをしているの?」  そう言ってさらに、カワイさんが距離を詰めてきたっすよ。だからジブンは、不安を与えないような返しを考えたっす。 「人間ドックと変わらないっすよ。異常がないかどうかを確認しているだけっすから。変なことはしていないんで、安心して大丈夫っすよ~」 「えっ。どうして、ボクがゼロタローの心配をしているって分かったの?」 「──腕を締め上げんばかりに尻尾で掴まれたら、誰だって分かるっすよ~」 「──あっ。……ごめん、なさい」  そう。カワイさんはジブンと距離を詰めて、パソコンを叩くジブンの腕に尻尾を巻き付けてきたっす。それはもう、ギチギチッと強い力で。  ジブンがそれを指摘すると、カワイさんはハッとした様子で、ゆっくりおずおずと尻尾と体を引いてくれたっす。  ……ふむ。悪魔の尻尾は本体の意思とは関係なく感情だけで動くものなんすかね? 興味深いっす。  なんてことを考えてしまうのは、カワイさんと同じく【好奇心旺盛】ってことで、どうか手打ちにしてほしいっすね。

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