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此奴ら何とかしてください

「いやだ、怖い」 「怖い?今怖いって言いました?怖いだなんて。兄さまでも冗談が言えたんですね!あははは」 周囲は可哀想な人を見る瞳を向けていた。 風紀とタメを張れる唯一の存在が言う台詞かそれは。 あの朝比奈 錦が、注射をみて蒼白に為っているのである。 初めは可愛い子供を見る瞳で看護師たちは彼をみてたが、今は困った人を見る生温い視線を向けている。 偶にいるのだ。屈強な男が注射を怖がるような豆腐メンタルだったとか。 まさか、錦がそういうタイプだとは弟の更紗も含め誰も予想できなかった。 「暴れると危ないですよ」 怖くないよー怖くないよーと猫なで声でなだめる看護師相手に錦がふるふると震える。 「後生だ止め……」 まるで殺人犯に追い詰められて、命乞いをしてるかのようなか細い声だ。 「手を握って差し上げます。大人しくしてください」 「手だけじゃ駄目だ」 「困りましたね、では……」 錦のスラックスのベルトを外し始めた。 「何してんだ貴様!!やめんか」 「なんですか。そんな急に怒るなんて。まさか生理でしたか」 「公衆の面前で何をしようというんだ。破廉恥な。セクシュアルハラスメントで訴えるぞ」 「手だけじゃ嫌と言うから、別の場所で繋ごうかと思ったんですけど」 「……おい、弟よ、お前頭は大丈夫か。今禄でもない事考えていただろう。誰に吹き込まれた?大体、腐れ風紀に連行されたらどうするんだ。お前と違い俺は恥をかくことに慣れていないんだ」 風紀に連行される以前の問題だ。 「兄さまを和ませるための冗談なのに。本気にして怒るなんて本当に頭が固いんですからぁ。そんな兄さまも大好きです」 周囲の視線はどんどん生温い物になる。 なんだこの兄弟 「馬鹿者。兄に向かいその手の冗談はよせ。全くどこで覚えてくるんだ。――ハッ、まさかお前、風紀の回し者なのか!!実の兄を謀ろうと。なんと恐ろしい。一之瀬 彪彦か?一之瀬 彪彦なんだな!?おのれ、俺の更紗を唆したのか。あの野郎」 「一之瀬さんって別に悪い人じゃないですよ」 「じゃぁ、お注射しますよー」 「なに?更紗、それはどう言う……っあっ」 「刺しますよー。動かないでくださいねぇー」 看護師のセリフに錦はピクリと体をはねさせる。 「や…止せ…俺は今大事な話を…まてっ…どさくさに紛れて何を…あっっ!針っ刺さって」 「兄さま深呼吸しましょう。ヒーッフッフッ。さぁ、リピートアフタミー。ヒーフッフ。はいはい。大丈夫。兄さまは強い人なので大丈夫」 「し、しんこきゅ、む、むりだ」 「無理とか諦めるなんて兄さまらしくない。そんな兄さま見たくない。がっかりです」 「朝比奈さん。暴れないで下さいね」 「っ……だめ」 更紗の手をぎゅっと握り錦は瞳を閉じる。 あんたらね、予防接種受けるだけで大袈裟なんだよ。 朝比奈兄弟の後ろに並んで待っていた兄崎は遠い目をした。

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