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第4話 甘酸っぱいデートと波乱(7)★

「っ、あ」  勢いよく飛び出した陰茎に頬を叩かれ、犬飼が反射的に目を閉じる。  けれども、羽柴が促すように頭を撫でてやれば、すぐに瞼を開け、先走りが滲む先端へと舌を伸ばした。その滴りを柔らかく舐めとったかと思えば、つうっと裏筋をなぞって、竿全体を丹念に舐め上げる。  時折、ちらちらと見上げてくる視線はいじらしく、羽柴の劣情をさらに煽っていった。ましてや表情が恍惚としていて、背徳感のようなものを覚えてならない。 「普段はきっちりしてる上司だってのに、とろっとろに蕩けた顔しちゃって」  犬飼の前髪をかき上げてやりつつ、意地悪な言葉を口にする。すると、相手は切なげに眉を落とした。 「あ、やらっ……軽べつ、されたくない」 「うん? 俺は蓮也がいつも頑張ってること、ちゃんとわかってるよ。――ほら、あーんしてごらん?」 「――……」  言われるがままに口を開ける犬飼に、羽柴は優しげな微笑みを返す。  しかし一方で、一切の容赦も恩情もなかった。犬飼の後頭部を押さえつけながら、ずぶずぶと己の欲望を捩じ込んでいく。 「う……んっ」  熱い粘膜に包まれるなか、犬飼がくぐもった声を上げるのが聞こえた。  だが、嫌がる素振りを見せることはない。むしろ、進んで口腔内に収めようとする。 「ほんと、頑張り屋さんのいい子なんだから」 「ん、んうっ……」 「ああごめんね、お口いっぱいで苦しい?」  犬飼の目尻には、うっすらと涙が滲んでいた。  羽柴はそれを拭いつつ問いかけるのだが、犬飼はふるふると首を振って、口いっぱいに陰茎を頬張る。そうして、口をすぼめながら口淫を施すのだった。 「……Good boy(いい子)、蓮也。すごく気持ちいいよ」  胸の内がゾクゾクと疼くとともに、羽柴のものが質量を増していく。辛抱たまらず腰をぐっと寄せれば、喉奥まで自身が入り込んだらしく、犬飼が苦しそうに呻いた。  羽柴の欲はとどまることを知らない。今度は相手の頭を両手で鷲掴みにし、無茶苦茶に腰を打ちつけてやる。 「ん、ぐっ、んんッ!?」  えずきそうになるのか、犬飼の苦しげな声が上がるとともに、喉の粘膜が羽柴をきつく締めつけてくる。  犬飼は顔をぐしゃぐしゃにさせていた。が、やがてこちらの動きに合わせて、前後に頭を動かしだすのだった。 「ふ……うっ、んっん!」  激しく出入りする男根が、じゅぷじゅぷと卑猥な水音を立てる。  羽柴はお構いなしで、本能のままに揺さぶり続け、絶頂へと上りつめていった。 (出るっ……)  最後は上顎に先端を擦り付けるようにして、限界を迎える。声をかけることもなく、そのまま犬飼の口腔内で精を放った。 「っ、げほ! ん、ごほっ……」  勢いよく放たれた白濁に、犬飼が大きく咳き込む。  そこでようやく我に返り、羽柴はあまりの状況に愕然とした。 「――犬飼さん? うそ、ごめんなさっ……大丈夫ですか!?」  慌てて身を引こうとするも、犬飼はそれを良しとせずに離れようとしない。あまつさえ、陰茎に残った残滓までも舐めとり、すべて嚥下してみせたのだった。  ようやく口を離すと、舌なめずりをして見上げてくる。 「羽柴……言うこと、ちゃんと」  そう呟く犬飼は、幸福感に満ち溢れた顔をしており――そして、股間を濡らしていた。  羽柴はゾッとする。  自分がした行ないに、信じられない気持ちでいっぱいになった。 (これじゃあ、凌辱と変わらないだろ……っ)

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