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第5話 さらけ出して、君となら(6)

 なんとか仕事を片付けて、時刻は午後九時を過ぎたところ。  羽柴は足早に会社をあとにすると、その足で犬飼のマンションを訪れた。犬飼は一足先に帰宅して、部屋で待っているとのことだったが――、 「連日のあれそれ大変でしたもんね。そりゃ、ポメちゃんにもなっちゃいますよね……」  わかってました、とばかりに羽柴はうんうんと頷く。  玄関で出迎えてくれたのは、ポメラニアンと化した犬飼だった。この姿になったということは、それだけ疲労困憊しているのだろう。  とりあえず、犬飼を引き連れてリビングへと向かう。それから床の上に正座すると、さっそくコマンドを繰り出した。 「蓮也、Come(おいで)」  コマンドを受けた犬飼は、尻尾を振りながら羽柴の前までやってくる。そのまま行儀よくお座りしてみせたので、すかさず羽柴は頭を撫でてやった。 「いい子。ちょっと待っててね」  言って、通勤鞄に手を伸ばす。  取り出したのは、重厚感のあるシックな化粧箱だった。ちょうど両手に収まるサイズのスクエア型で、蓋の上部にはブランドロゴが刻まれており――いかにもといった代物である。 「犬飼さん――いえ、蓮也さん」  あらたまった調子で名を呼び、羽柴は犬飼の前に跪いた。  緊張しながらも、化粧箱の蓋をゆっくりと開く。  中には、革製の黒い首輪とリードが鎮座していた。シンプルなデザインではあるものの、プラチナコーティングの施された金具がアクセントになっていて、上品な雰囲気を醸し出している。  それを化粧箱ごと持ち上げると、真っ直ぐに犬飼へと差し出した。  そして、静かに深呼吸をしてから、 「俺と、正式なパートナーになってくれませんか」  意を決して、そう告げたのだった。

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