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番外編 はじめての発情トラブル(3)★
「んっ、は……あ」
中を押し広げようとする指の動きに合わせて、犬飼の口からは甘い吐息がこぼれる。
もはや自分で解している感覚がなかった。羽柴の好き勝手に体内をまさぐられ、翻弄されていく。
「ほら、蓮也の好きなところ。よしよし、って」
言葉自体は甘いはずなのに容赦がない。羽柴はこちらの指ごと前立腺を撫で上げ、執拗に責め立ててくる。
犬飼は身をよじろうとするも、後ろから抱きかかえられているせいで、まともに動けない状態だった。
「あっ、ん――それ、やめ……っ」
「なんで? いい子されるの好きでしょ?」
「いい子いい子」と耳元で囁かれて、その声音にすら感じ入ってしまう。
犬飼はイヤイヤをするように頭を振ったが、従順な体は快感を拾い上げ、もっと触ってほしいと訴えかけているようだった。
勝手に腰が揺れてしまい、自分の浅ましさが嫌になるのに、それでもなお止められないのだからどうかしている。
「も、いやだ……指じゃ、なくてっ」
早くこの男が欲しくてたまらない――欲望がとうとう限界に達し、震える声で羽柴にすがりついた。
向き直った拍子に体内から指が抜けて、そこが喪失感にヒクついているのがわかる。犬飼が切なげな眼差しを向けると、羽柴もまた情欲を宿した瞳でこちらを見下ろしていた。
「おねだり、上手だね」
羽柴が犬飼の体を抱え直して、向かい合わせに自分の上へ座らせようとする。それから仰向けに寝転がり、今度はこちらが相手を見下ろす形になった。
犬飼が期待に胸を膨らませるなか、羽柴の唇がゆっくりと動く。
「いいよ、蓮也――Come 」
そのコマンドを受けた瞬間、脳髄が蕩けるような感覚を味わった。
命令されるがままに股ぐらをくつろげれば、雄々しくも反り返った男根が姿を現わす。犬飼はごくりと生唾を飲み込み、胸を高鳴らせながら羽柴のそれを後孔へと宛がう。
「ふあ、ぁ……っ」
腰を落としていくと、待ちわびた質量に満たされる悦びで、体が打ち震えた。
結合が深まるさなか、羽柴が腰に手を添えてきて、労わるかのように撫でてくれる。それがまた嬉しくて、胸がいっぱいになるのを感じてならない。
「あっ、ん……羽柴ぁ」
「ん、いい子。蓮也が頑張ってくれるおかげで、どんどん奥まで入ってくよ」
「っ――」
根元まで呑み込んだところで、熱い吐息を漏らす。
今となっては、粘膜が馴染むのを待つ時間でさえ惜しかった。犬飼は羽柴の胸板に手をつき、拙 い動きで上下運動しだす。
「っ、ん……はぁ」
はしたないと思うのに、どうしようもなく気持ちがいい。羽柴のものが内壁を擦るたび、痺れるような快感に襲われて肌が粟立つ。
羽柴もまた興奮しているのか、先ほどからこちらを食い入るように見つめていた。反射的に締め付けてしまうと、小さく息を詰める気配がする。
「羽柴っ……きもち、いいか?」
「うん、すごく気持ちいい。蓮也は?」
「あ、あぁ……俺もいいっ――これ、嬉しい」
言って、繋がれたリードを軽く摘まむ。リードは羽柴が的確な長さで持ってくれていて、腰を動かすたびに激しく波打つのが、さらなる快感を煽ってくるようだった。
犬飼は夢中になって腰を振りたくる。次第に動きを速めていき、そうこうしているうちにも絶頂の兆しが見えてきた。
「っは、あ、イく……も、イきそうだ……っ」
そう告げた瞬間、予期せぬことにリードが引っ張られる。
「Stay 」
羽柴がコマンドを発した途端、ぴたりと犬飼の動きが止まった。見れば、羽柴は口の端を吊り上げて笑っている。
「俺の許可なくイッちゃ駄目だよ、蓮也」
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