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海外ロケとスキャンダル(8)

 万歳してシャツを脱がせられ、カーゴパンツも、濡れた下着と一緒に一気に引きずり降ろされ、足から抜かれる。  文字通り、一糸纏わぬ姿になった。  色白の、筋肉の薄い体で、細めの性器だけが、いっぱしの雄の顔をして反り返っている。  下生えは根元に申し訳程度にあるくらいで、竿は周りの肌より少し濃いめのピンク色。平常時より膨らんだ先端は欲情の色に染まり、鈴口に雫を浮き上がらせ、竿をしとどに濡らしていた。  一気に皮膚を朱に染めた羞恥は、すぐに居たたまれなさに置き換わる。  一度目のときは、ずっと後ろから繋がっていたことを思い出したからだ。  男性器を、好きな相手にこうも堂々と晒すのは初めてだった。  後ろも前も、見られるのが恥ずかしいことには違わないけど。三間は、男の体をあまり見たくないだろうと思う。一度目のときも、僕を抱きながら佑美さんの名前を呼んでいたくらいだし。  そう思って、上半身を起こし、うつぶせになろうとしたところ。「待て」と声をかけ、三間がベッドから腰を浮かせた。  ベッドの端から50㎝ほどの距離にある窓へと手を伸ばしている。その窓は、ホテルによくある、完全には開け放たれないようアームのついた回転式のタイプになっている。  三間が窓を開け、夜になって涼しくなった風が、カーテンをさらりと揺らす。 「匂いますか?」  暑かったら冷房を入れたらいい話なので、窓を開ける理由はそれしかない。 「お前、本当にわからないのか?」  いかにも臭そうに、三間が鼻に皺を寄せる。 「自分にはわからないです」  1階のレストランで、三間と稲垣は僕がオメガであることに気づいたようだった。匂いで気づいたとしか思えない。 「おそらく抑制剤の使い過ぎだ。使いすぎると嗅覚がおかしくなったり不妊のリスクがあるって添付文書に書いてあるだろ。日本に帰ったら、薬を減らすかやめられないか、医者に相談したほうがいい」  抑制剤の効きが悪くなっているから、こうしてフェロモンを抑えられなくなっているわけで。薬を減らすかやめるってことは、ベータに擬態することをやめるってことだ。  今すぐ結論が出なさそうな問題を、僕は頭の片隅へと追いやった。   窓から向き直った三間が、立てていた僕の両膝を大きく左右に開き、その間に自身の体を割り込ませる。  うつぶせになるつもりで上半身を起こしていたから、三間を膝の間に挟み、至近距離で顔を合わせることになる。  反射的にずり上がろうとした体を、両側から太股を掴まれ阻止される。 「先に一回抜いてやるから、横になれ」  先に一回抜くというのは、僕だけイかせるという意味だろう。  彼が何故そんなことを言うのかわからなかった。オメガだけイかせても、アルファは何の快楽も得られないだろうに。  一度目のときだって、繋がるまでは先にイかないように、根元を手で締め付けられていた。 「すぐに……挿れてもらって大丈夫ですよ。ヒート中のオメガは、アルファを受け入れるようにできているので……」  一度目のときも、同じことを言った記憶がある。  不思議と、同じ台詞なのに、あのときのような惨めな気持ちは少しも感じなかった。  不本意そうな顔を向けられたと思ったら。  その顔が近付いてきて、キスされる。  少しだけ乱暴に、唇を引っ張られ、舌を弄ばれながら、両肩を掴まれ、ゆっくりと背中側へと体を倒される。  もうこれ以上何も言うなと。言葉を塞ぐためのキスのようにも思えた。  それは僕にも都合がよかった。  喋り過ぎるのはよくない。  口にしてはいけないことを、言ってしまいそうな気がする。訊いてはいけないことを、訊いてしまいそうな気がする。  互いの気持ちも、この行為の意味も。何も言わず、訊かず。  ただ本能に抗えなかったゆえの過ちにしたほうがいいことは、わかっている。

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