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海外ロケとスキャンダル(14)
互いの唇の狭間で戯れるように擦り合わせていた舌が、離れていく。
「今回は我慢できたな」
僕を見下ろす顔が、蠱惑的に濡れた口角を吊り上げた。
言われた言葉を理解するより先に、繋がったままの腰を揺すられ、圧迫感が波紋のように広がる。
「ぅ、んっ……」
それでも、挿れた直後ほどの苦しさはなかった。自分の体が、急速に三間のカタチに馴染んでいくのがわかる。呼吸もままならないほどの圧迫感が、徐々に「苦しい」から「気持ちいい」という感覚に変わっていく。
「ほら。ちゃんと全部入ってるぞ」
膝裏を抱えられ、結合部を見せつけるように左右に大きく足を開かれて、思わず「ひっ」と喉が引き攣れた。
ゆるく勃ち上がった自身の性器の先――、赤みを帯びた縁 がめいっぱい広がり、怒張した雄を根元まで飲み込んでいる。黒々とした彼の下生えもぐっしょりと濡れていて、堪らなく卑猥な光景だった。
咄嗟に顔を横に背けて視線を逸らす。
何故、そんなものを見せつけるのか。
単に辱めたいだけなのか。あるいは――。抱いているのが自分だと、誇示したいとか?
だとしても、それは別に相手が僕だからではなく、アルファの習性なのだろう。
濡れた下腹を、軽く押される。
「わかるか? ここまで来てる」
薄い腹壁を間に挟み、三間の掌にゴリゴリと撫でられたものが飲み込んだ雄だと悟り、思わず下肢に力が入る。結果的に中のものを締め付けてしまい、三間が、くっ、と小さく呻いた。
「なじむまで、動くの我慢してやってんだぞ」
左手が頬に触れ、背けていた顔を正面に戻される。
恨みがましく睨む顔は、確かに何かを我慢しているようにも見える。不覚にも、可愛いと思ってしまった。
愛おしさが募り、奥がきゅんと疼く。
「ちゃんとした発情期 じゃないから、泣くほど痛いんだろ?」
濡れた目尻を指の腹で拭われる。
感極まって泣いてしまったのを、痛みの所為だと思われたらしい。僕としては、そのほうがよかったけど。
「大丈夫……から……動いて……」
大丈夫だから動いて。喘ぐように言った。
繋がったまま、三間が覆いかぶさるように上半身を屈めてくる。自身の薄い腹と、彼の硬い腹筋に、僕の半勃ちの性器が挟まれ、擦れる。
自ら唇を開いて、彼の舌を受け入れた。
不思議だ。
キスをすること自体、今回の人生では今日が初めてなのに。エレベーターに乗って以降、目が合うたびに欲しくなって、キスをしている。
一度目の人生のときもキスをしたけど。それは欲情を発散させる手段の一つでしかなかった。
なんか、今日のは、まるで――……。
こんな恋人みたいな扱いをされて、明日から何事もなかったかのようにただの共演者としてやっていけるのかと、ちょっとだけ不安になった。
キスをしながら、三間が、ゆるゆると腰を揺らす。
抜いて、挿れる、というゆっくりとした動きは、徐々に激しくなっていく。僕は声を堪えるために、脱ぎ散らかしていたシャツを手繰りよせ、口の中に入れた。
指で弄ばれた浅いところの膨らみを、指とは比べ物にならない硬さと太さで小刻みに擦られるのは、髪を振り乱して悶えたくなるほどの気持ちよさだった。
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