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第19話 クリスマスの贈り物
どこにでもあるチェーン居酒屋で開かれた会社のクリスマス会。
持ち寄ったプレゼントをくじ引きで交換するイベントで、それは起こった。
くじを引いてプレゼントをもらうときは「嬉しい!あなたのファンです♡」と満面の笑みを浮かべ、プレゼントを渡す側になると「ずっと好きでした♡」と包装された個包を差し出す。
普段はキリッとしている先輩が酒に酔って壊れ、目も当てられない醜態を晒した。
悪ふざけしたおっさんたちの擬似恋愛が目の前で繰り広げられる。
酒がもたらす酩酊と歓楽的な雰囲気。
そして、クリスマスという非日常。
それらが全部合わさって、普段なら白ける空気を熱くする。
ドッと沸き起こる笑いの渦に、俺も周りに合わせて笑った。
心の中で、歯軋りをしながら。
俺にだけ見せる笑顔。
俺にだけ向けられる「好き」という言葉。
俺の、俺だけの先輩なのに。
なんだよ「あなたのファンです」って。
なんだよ「ずっと好きでした」って。
先輩の恋人は俺だろ。
先輩の童貞も処女も奪ったのは俺だろ。
なんで俺以外のモブに媚び売ってんだよ。
俺がドロドロとしたどす黒い感情を渦巻かせているのに、先輩は赤ら顔でヘラヘラと笑っている。
女性陣から「可愛い」なんてキャーキャー言われてにんまりしやがって。
明日は会社の定休日。
この後、先輩は俺の家に泊まる予定だ。
つまり、元々そのつもりだったんだけどさ。
――覚悟してよね、センパイ?
*
突き飛ばされたベッドの上。
荒々しく体を暴いていくかっこいい恋人。
「俺以外、見るんじゃねえよ」
すべてを奪うような行為は、けれど蜂蜜を煮詰めたように甘くて重くて。
獣みたいな目に貫いかれて、胸が熱くなって……そして安心した。
会社のクリスマス会。
プレゼント交換で、彼は教育を担当している新人女性からコーヒーメーカーを貰っていた。
「ありがとう。嬉しいよ」
笑顔を向けられた新人女性の顔が赤くなる。
それが俺の胸を切りつけ、抉った。
やめてよ。
彼は僕の最愛なのに。
僕の気持ちに気付かない彼は、新人女性と談笑する。
はあ?
ちょっと…いや、かなりムカつくんだけど。
そっちがその気ならいいよ。
僕だってやってやる。
酒の力を借りて、普段は絶対にやらないことをした。
僕のキャラ崩壊に、同僚たちは驚きながらも楽しんでくれた。
でも、彼は同僚たちと同じ反応をする。
それは、僕が予想した反応じゃない。
本当なら、嫉妬丸出しの顔をしているはずなのに。
それが辛くて、寂しくて、最後は同期であり上司でもある課長に泣きついた。
そしたら、彼に無言で首根っこを掴まれて、タクシーに放り込まれた。
予定通り彼の家に行って、それから今、ベッドで愛されている。
それで、わかった。
僕も彼も、同僚たちに嫉妬していたんだって。
気持ちは真っ直ぐにお互いを向いていて、好きで好きで堪らないんだって。
「誰も見ない。君だけを見ているよ」
愛していると囁いて重ねた唇。
僕たちに贈られたクリスマスプレゼントは、揺るぎない愛の証明だった。
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