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催眠ってなんだよ? 2
俺は「確かにー」ってゲラゲラ笑って高峰の肩を叩いた。すごく嫌そうな顔をしてて、本来ならやっちまったかなんて気が引けるはずが何故か気分が高揚する。
それからは高峰の姿を見つければ絡みに行くようになった。グループのやつらとも当たり前につるんでるけど、今は高峰が気になるんだからしょうがない。
駆け寄ればうんざりしたような顔で見られる。その高峰の顔が……正直言っていいんだよな。なんつーか、ヘラヘラ当たり障りない対応してくるやつより素で接してもらってるみたいな安心感っていうか。
俺、そんなに人付き合いに疲れてたっけとか思っちまうけどな……。
「なあなあ、スクリプトとやらは書いてないのか?」
「関係ないだろ」
「だって気になるんだよ。あれがなんなのか」
俺が毎度のように質問するからか、高峰はとうとう諦めたように白状した。
「あれは……催眠音声のスクリプト、つまり台本」
「さい、みん? 催眠術ってこと? あのテレビでやってる?」
「あれはエンターテインメントの演し物に近いと思う。自分のは……まあ、うん」
「まあってなんだよ。何が違うん?」
俺はそういう知識はさっぱりなかったから高峰の言いたいことがわからなかった。ユーキューブのASMRみたいなやつとか実況とか配信とかとは近いけどちょっと違うって言うんだ。
「あー……だから、そのー、同人イベントとかで音声作品として売ってる……」
「同人ってコミマみたいなやつ?」
「まあ、そう」
夏と冬にでかいイベントがあるアレ。アレ以外にも小規模なのが日本各地で開催されているらしいけど、高峰はそういったイベントでデータを売っているんだそうだ。ちょっとびっくりした。俺、同人って漫画ばかりだと思ってたんだよね。
音声データなんて売れるんだな。ていうか、催眠! どういうこと!? って気になってしょうがない。催眠術とは違うってどういうことなんだろう。俺の知ってるのはあの勝手に手が上がるとか組んだ手が離れなくなるみたいなやつだけなんだよな。
「高峰が音とか声を入れて売ってるってことだろ? 催眠ってやつの」
「ちっがう! 自分はスクリプトだけ書いてて声は同人声優さんに発注してんのっ」
「声優!? すげぇ!」
身近にこんなことやってるやつがいるってのにも驚きだ。俺はクリエイティブな才能はあんまないからなぁ……。高峰が編集とかを一人でやってんのか? 俄然興味が湧いてきた。
「なあなあ、台本見たい見たい見たい見たい」
「嫌だ。無理無理無理無理」
「じゃあ、かいつまんで内容少し! お願いします!」
「なんでだよ……こういうのは知り合いに言うのはクッソ恥ずかしいもんなわけ。察しろ」
そう言われた俺が泣きそうな顔で講義室で土下座してお願いしたら、高峰はちょっと目を見開いてふいっと斜め上を向いてしまった。ただ、そのせいでバッチリ見える赤い耳。もしかしてこういうのに弱いのか?
「……だから、その……ドM向け焦らし、からの……性感爆上げノーハンド連続絶頂……」
「は……?」
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