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第6作品「憧れの人」
❁あらすじ
俺には昔からの親友がいた。名を小笠原奏太、聖ヶ丘中学のヤンキーで俺とつるんでいた。しかし疎遠になってしまい、同じ高校に行くつもりだったのに残念な気持ちで高校の名簿を見ると小笠原奏太の名前があった。だが、彼は違った。ある日のバイト帰りで奏太と鉢合わせしてしまい……。
※性的描写・玩具・金魚のフン・教師×生徒・ハピエンが含まれます。
❁試し読み 10ページ
四月三日羽山はやま高校の入学式が行われた。
春らしい気温と桜が満開でとても居心地が良かった。
クラス分けテストを前日に行い、入学と共に張り出されたクラス表を睨む。
知っている名前がそこにあったからだ。
しかも俺の憧れの人の名前だ、中学が一緒でずっとつるんできたのに一月に入った頃に急に俺から離れ連絡も取れずほぼ音信不通状態だった憧れの人、
学校ですれ違っても無視され目線を合わせようと頑張るもそらされそれが続きてっきりもうそれっきりだろうと思っていたのにまさかの再会できることに俺は少し嬉しく思っている。
浮いた気分でクラスに入り、黒板に張り出された席順を見た。
「小笠原奏太 」出席番号五番、後ろを振り替えり席を見つめるもそこにいたのはまったく知らない人だった。
「誰だよ」と呟いてしまう。
「あ、お前、聖ヶ丘 中学のヤンキー、瀧澤翼 」と声をかけられたのだ。
「誰?」
「あ、俺同じ中学の小鳥遊 っていうんだ、よろ~」とまぁ気軽なやつが話しかけてきたのだ。
まぁ別に俺に対して敬語とかいらないけど。
「お前、同じ中学なら小笠原奏太って知っているか?」
「ああ」
「瀧澤と同じでヤンキーだったし有名だもんなぁ、てかさっき挨拶したんだけど、五番の席のやつ違うみたいだぞ」
「やっぱり……同姓同名ってやつか」
「みたいだなぁ、お前ら仲良かったし、てっきり同じ高校かと思ってたのに」
「俺もそう思ってたよ、ずっと一緒にいるもんだと思ってたから」
「だよな、なんか辛いな、そういうの」
「ああ」
そう俺は結構辛い思いをしたのだ。
だがそれも仕方ない小笠原奏太はこの学校にいないのだから。
それにしても俺が出席番号二十番で目の前には小鳥遊がいて……。
くそ、あの可愛い笑顔思い出しちゃったじゃないか、あー会いたいのに……。
俺に向かってにひっとした笑顔は殴り合いをした後、絶対に見られる俺に向けられた笑顔だった。
やばい、思い出しただけで勃起する。
トイレに行きたいがもう少しで担任も入ってくるし平常心、平常心と自分に言い聞かせた。
担任が入ってきた自己紹介になり、五番の男が立った。
髪はボサボサだし眼鏡をかけいかにもぼんやり系だろ、あの素早い動きとか出せなさそう、地味系オタク男子みたいで正直見るのも嫌だし、殴り飛ばしたいと思ってしまう。
落ち着け、俺は高校に入ったら売られた喧嘩は買うけど自分からは動かないと決めたんだ。
奏太がいたから俺は楽しかったのにお前がいない世界なんて俺は嫌だ、だいたい離れるぐらいならキスして抱きしめて告白すればよかった。
俺も奏太も男だけど、それでも俺は彼のことが好きなんだ。
「えっと小笠原奏太です、よろしく」とボソボソ呟いていた。
絶対に仲良くできない人種だ。
クラスのみんなも笑っていた。
こりゃ遅かれ早かれいじめの標的になるのは目に見えている。
「次、瀧澤」
「聖ヶ丘中学から来ました、瀧澤翼です、よろしく」
「え! 聖ヶ丘中学のヤンキーじゃん、俺と仲良くしようぜ」と言われいちを手を挙げておいた。
俺はいちを有名らしい。
ホームルームが終わり俺の周りには人だかりができていた。
今までは小笠原奏太の金魚のフンとしておこぼれをもらう時もあったが今はそうじゃない、俺としてみんなが周りにいるのだ。
別に奏太の金魚のフンは嬉しいんだけどさ、思う分は違うところもあって反感買うとか普通にあった。
奏太、弱い者いじめとか助けるタイプで誰にでも笑顔だったし、まぁあのにひっ笑顔は俺だけのものだけどな……って俺どんだけ奏太のこと好きなんだよ、めっちゃ好きだ、早く告白して俺だけの物にすればよかった。
離れてからは悪夢ばっか見るし喧嘩にも負けるし、頼りなさすぎなところも風の噂で聞いただろうし本当に嫌だった。
「なぁなぁ瀧澤ってどうして小笠原と離れたんだ?」
おいおい、俺の嫌なところつくなよ。
「あーわかんね、気づいたら無視されてた」
「まじか、小笠原って基本みんなに対して優しいイメージで仲間思いな感じがしたから絶対にそれはないって思ってたのに、なんかちょっとイメージ崩れしちゃうな」
「あ、まぁ、そうだな」
「なぁなぁ、もしも小笠原が目の前にいたらどうする? やっぱ喧嘩する」
「あー一発殴るかも」
「理由も聞かずに?」
「まずは一発殴りたい」
理由を聞かずにだ、奏太は教えてくれるのだろうか、下手したらすぐに俺の元からいなくなりそうで怖い。
もう目を逸らされたり無視をされたりなんてことされたくない。
「瀧澤、お前小笠原いなくなったの結構痛いんだな」
「まぁな、ずっと一緒につるんでたし」
「どんくらい?」
「小学後半くらいかな、俺元々いじめられっ子でさ、奏太が助けてくれなかったら橋から落とされてたかもしれないし」
「へ、へぇいじめってそんな怖いこともするんだ」
「やばいやつは、まじで殺人レベルだからな」
「で、その時の救世主が小笠原奏太ってやつなんか、なんか良いな」
「ああ」
次の授業は移動教室だ、そろそろ本鈴もなるのに同姓同名の男は一人席に座っていた。
少しだるそうにしていたが俺には関係ない。
小鳥遊と合流し近くに座り本鈴が鳴った。
しかしその授業には来なかった。
授業が終わってクラスに戻ると彼はいなかった。
まさかな……。いじめか?
とも考えたが入学してまだ一週間しか経っていないのにもういじめが発生するのかなんて怖いことは考えたくもない。
俺に起きた小学生のいじめは橋から落とされるところだった。
もう昔の話だ、忘れろ……。
「あ、小笠原戻ってきた」
先生に事情を話していた。
「保健室行くときは誰かに伝えろよ」と聞こえたので具合が悪かったのであろう。
たしかに誰かに伝えろよとは思うけど友達もいないぼっちにそれは難しい課題ではないかと思ってしまう、だからといって俺が仲良くするのもなんかおかしいし、ていうか俺入学式の時の浮かれ気分を返してほしいくらいだ、まさか同姓同名がいるなんて思いもしないだろ。
席に戻るところを見ていたら足を引っかけられたのか派手に転んだ。
「うっ……」
「おい、大丈夫か」
「すみません……」
悪くないのに謝っちゃって、あそこのやつらだな、本当に人で遊ぶなんて頭おかしいだろ。
って自分か、助ける助けないにしろ、俺は今足を出したやつらを責めていない、その時点で同罪だ、この教室にいて今の瞬間を見たやつはみな同罪なのだ。
席に座り教科書を広げるも濡れていた。
あーもう斜め前の前の席にいるから視界にどうしても入ってしまう。
近かったら教科書見せてあげられたのに……。
それでも彼はその濡れた教科書を広げていた。
昼休みに入り学食に行かないかと小鳥遊に誘われ付いていく。
「お、俺今日は唐揚げ定食にしよっと」
「今日はって昨日も唐揚げ食ってなかったか?」
「いいの、俺の大好物なんだから」
「ふーん」
俺も唐揚げ定食にした。
だいたい普通に唐揚げって美味いから最高なんだよな。
続きは文学フリマ東京39にて!
❁他
youtube
https://youtu.be/CGFDRzDhSbM?si=KX2r46NVHbLiq3jc
note
https://note.com/eriko_bl/n/n859623782065
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