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奇妙なこと。 試し読み

東京渋谷 いろんな人種・老若男女が街を訪れる。ひときわ変わった場所。 そこに今回のターゲットがいる。 俺の名前は無名(ムジナ)、 どこの組織にも所属しないことから殺し屋からのコミュニティからはそう呼ばれるようになった。まぁ俺も少し気に入っている。 渋谷センター街のビルの屋上からスクランブル交差点を見下ろす、写真が風になびき、揺れる。 ターゲットの男は暗めの表情だ。なぜこの男がターゲットなのか俺も分かっていない。殺しに私的を含むこと、感情を含むことはあってはならない。 「見つけた」 ぽつりと声を漏らすとその男の後を追うためビルから降りた。殺し屋と言っても暗殺者に近い。 静かに忍び寄り首元を狩り取るのが俺のやり方だ。 だが、この男はあらゆる殺し屋からの攻撃をかわしているようだ。 なぜ? 考えるだけ無駄だ。 前を歩く男は止まった。今その瞬間、こいつの首を狩り取る。袖からナイフを取り出した……。 「え!?」 狙いは正確だった。 首が一瞬にして下に下がったから俺は思わず声を出してしまった。見つかったら殺し屋としての名が汚れる、後ろにとびのき、姿を隠す。 男は目の前にあった、ガチャガチャをするために下がったということなのか。 俺にしては珍しく心臓がバクバクと鳴り響いていた。 情報屋、こういうことは書いておけよ。 ……。いや俺の情報収集も甘かった。 男はガチャガチャの前で出てきたカプセルを子供のように嬉しそうな顔で見ていた。 カプセルの中身は小柄な女の子の人形だった。 そういうのは小さい女の子がするものだろう!!  とツッコミを入れたくなってしまったが、感情はいらない。 深呼吸して再度男に狙いを定める。男はきっと可愛らしい人形が好き。 となるとガチャガチャには要注意だな。 俺のポイントに誘い込んで殺すのが手っ取り早いか。 男に追跡用の小型マシンを、すれ違い様につけ、さきほどのガチャガチャに向かった。 ガチャガチャをよく見ると可愛らしいのか  ??  人形にはどこかおかしい点があった。 足が血で染まっていたり、腕が切断されていたりと、正直な感想としてこれはグロテスク人形だ。 殺す目的で俺もガチャガチャをまわしたが、これはシークレット。心臓に包丁が刺されていた……。 ぞくっと身の危険を感じた。 こんな製品売るなよなと殺し屋の俺でも思ってしまった。 スマホで男の位置を確認する。 一点に留まり動く気配がない、この場所は……。 やはりオタクが集まるアヌメイトだった。 そろりと入り、男の正確な位置を確かめる。 いた。 やはり先ほどのグロテスク人形のグッズ売り場にいた。 しかしその光景は周りの人から目を引いていた。 高身長でかつ黒服、黒髪、髪はぼさぼさと寝起きか! とまたツッコミを入れてしまいそうなほどに目立っていた。 カプセルのおもちゃよりもぬいぐるみのほうが大きく、 そして口から血を流していた。 うぐっ。 とりあえず情報収集なため男の近くまで移動する。防犯カメラがある中殺しはさすがに難しいし、平日とは違って人が多い。 だが、グロテスク人形人気なのか男以外にも何人かの女子が見ていた。俺が近寄ると男はこちらを向いた。 へ? 「あ、ルーガちゃん」 「え?」 思わず知らぬ名で声をかけられた。 「見て、このルーガちゃんと君の髪色そっくり」 ブロンドに染めた髪がお気に召したのか言葉を交わしてしまった。 「あ、はぁ……」 そのルーガちゃんというぬいぐるみを見ると先ほどシークレットでひいた心臓に包丁が突きささっている人形だった。

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