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第8作品「四つ葉のクローバー」
❁あらすじ
世界に認められた日本人のピアノ演奏者が四人いる。そしてその四人で組まれたグループ名を「四つ葉のクローバー」といい四台ピアノに挑戦してからは出演が引っ張りだこだ。そんな中とあるクリスマスコンサートで世界三大ピアノを使った演出を行うということで現場監督の綾小路が現われ四つ葉のクローバーリーダー斎木奏音を抱いていると噂が広がる。実は元恋人同士だったと。そして同じグループの西園寺志揮は奏音に思いを寄せて告白するが返事は保留にされてしまった。
❁試し読み 10ページ
十二月一日 日曜日十八時開演。
混み合う会場はブザーと共に静まりかえった。
幕が上がり四台のピアノが出現すると大きな拍手と共に四人のピアニストが登場した。
四人は椅子に腰掛け準備が整ったところで指揮者の西園寺志揮 が体を大きく動かした。
その途端四人は一斉に同じ音を響かせ会場はビリビリとそして肌には鳥肌が立つような感覚を味わった。
演奏曲はベートーヴェン作曲ピアノソナタ第八番「悲愴」第一楽章。
この日のためにリーダーである斎木奏音 が四台ピアノ向けにアレンジした曲でありどのグループにも真似できない演奏だ。
最初はとてもじゃないけど四人で弾くのは息が揃っていなければこのような力強い音は出ないだろう。
そして流れるように演奏された曲は幾重にも交差し広がり音を増幅させながら最後は四人で着地した。
第二楽章
先ほどの迫力の音と打って変わりなめらかでどこか眠りに誘われそうな音を響かせていた。一人で弾くにも美しく魅了されている曲だが四人で弾くとさらに際立っていた。
第三楽章
これまた第一・二楽章ではなく飛び跳ねるような速さを求めている曲に変わり眠気を覚まさせるような音が会場内に響いた。Rondo何度も音が繰り返されるような意味だがここでは違った。徐々に変化されていく音が新たな風景へと導いてくれる、とても素敵な音を奏でていた。
そして小さい音から始まり呼びかけるようにメロディーが組まれそしていくつもの音が調和し重なり合い緊張していた気分が解け、最後は四人で動じに着地した。
四人は立ち上がりお辞儀をした途端会場内は拍手に包まれた。
裏に退散した四人は口を開く
「お前、第二楽章の途中で音ミスっただろう」
「ごめん律、本当にあの後C弾かなくてよかったよ」
「まぁそこは懸命な判断だな、ていうか奏音かのんもだぞ、お前第三楽章の途中で音増やしやがって、変にならなかったのが救いだけど」
「うわぁーバレたさすが有名ピアニスト家族の財前律 くんだね~」
「お前、俺をバカにしてるんだったら演奏中に音増やすのまじやめろ」
「ええ、そこは上手くやっちゃうのが俺なんだから多めにみてよ」
「まぁ確かにお前がいないと四台ピアノは演奏できねぇけど」
「でしょでしょ」
「調子に乗るな!!」いがみあっている二人を見ながら声をかけた。
「こぉら、二人ともここはまだ舞台裏だよ、客席に聞こえちゃうかも」
二人は目を合わせリーダーである奏音はこちらに来た。
「志揮はいつも通りかっこいい演奏してたよ」
「天才ピアニストの斎木奏音に言われたら俺も最高の気分だよ」
「ちょっお前、志揮も立派な天才ピアニストじゃんか」
「俺は弾けてもアレンジはできない、ましてや一人で弾く曲を四台に増やしそれを一日で仕上げるなんて不可能だよ、奏音だけの特別な能力だ」
「うぃーそんな褒めてくれてもなんもでないからな」
二人でいちゃいちゃしていると口を挟んだのは律だった。
「相変わらずのゲイカップル、うげぇー響ひびきあっち行ってようぜ」
「う、うん……」
二人は控え室に向かった。俺と奏音は二人で別の演奏があるため待機。
あとそれと律がゲイカップルっていうけど奏音からまだ返事もらってなくて一方的な恋みたいな感じなんだよね、だからまだカップルじゃないしそもそも奏音に出会う前は女性と恋仲だっただからゲイでもない、奏音も「ゲイでもホモでもないよぉ~」って言ってたから多分ゲイカップルには当てはまらないはず……。
まぁでも律のようにああ言われるのはいたし方ないのかもしれない。
「出番だよ、頑張ろうね志揮」
「ああ」
二人で舞台に上がり公演を終えた。
斎木家の地下ホールまで戻ってきてとりあえず会議を行う。
「んはぁーっ疲れたぁ~」
「みんなお疲れ様、すごく良かったよっていうとおかしいかな、プロだもんね」
「そうですね……」
珍しく静まりかえる四人と監督責任である九条 さんは引きつった顔をしていた。
まぁその原因はなんとなく分かるんだけど。ソファーで寛いでいてちらっと横を見れば俺の腕にしがみついている奏音がいたからだろう。
律がなにか言いたそうな顔をしているがあえて振らないでおこう。
そして目配りのように九条さんが助けてと見ていたので俺は立ち上がり「次の予定の確認をお願いします」と言った。
そして奏音から遠ざかる。
「ちぇっ」と聞こえた。
「おまえら付き合うのか付き合わないのかどちらかにしたらどうだ?」
そう言われてしまい奏音のほうを向くと軽く手を振っていた。
ということは期待はしていないということになるだろう。まぁ奏音がなにを考えているのかは分からないが奏音がもし俺を選んでくれるなら俺は迎え入れる準備ができているからと思い九条の話を聞いた。
「えーでは来週は響くんが一人コンサートに出演で、律くんは違うコンサート会場にゲストとして参加だね、四人揃うのは……クリスマスの時だけだね、いちを現場監督との顔合わせは斎木くんいいかな?」
「ふぇー現場監督誰ですか?」
「えっと綾小路東雲 さんだね」
そう聞くと奏音はビクンと肩を奮わせていた。
「……分かりました、九条さんももちろんついてきてくれるんですよね?」
「あ、うん挨拶程度にね、そこで演奏する項目とかは二人で決めたいって言ってたから多分僕は途中で抜けるかもしれないけど」
「……そうなんですね、了解です」
これはなにかあるな、綾小路東雲さんって言ったら女の子にすぐ手が出るって話しだ、俺もついていこうかな。
奏音可愛いからちょっと心配なんだけど……。
か……可愛いは大袈裟かな「黒い髪が焼けたから茶色になった~」っていう衝撃な事実を口にしていた奏音はそれも可愛いし仕草も可愛い、顔は童顔なのか二十四歳には見えない、律は逆に二十歳なのに老けて見える、怒られるから言わないけど、響は二十一歳それなりの歳の顔、で俺は二十六歳、まぁ普通だろう、というか大学を飛び級して卒業しているからこうして仕事につけるということだ。
特にすごいのが奏音、あのヨーロッパで有名なミンティア音楽大学を十九歳の時に首席で卒業していることだ。
やっぱ俺たちとはレベルの差を感じる、俺だって海外で有名な音楽大学卒業しているけど、やっぱなんかこう染み出るオーラが違うっていうか、本当に奏音好きだわ。
奏音が奏でる音も名前の通りっていうか一音で音色を奏でているっていうかC単体でも続く音が輝いているというか……。
多分一般の人には伝わらないかもしれない。だから俺も奏音の音を真似して弾いてみたりしている。そしてだんだんと彼のことを好きになってしまう結果に……。
「志揮!! 志揮!! ってば!!」
俺は呼ばれていたらしい。
「どうした奏音?」
「もういい」と膨れてそっぽを向いてしまった。
いや、それも可愛いんだけど……。
ということで俺たちは四台ピアノコンサートの演目が決まるまで各自自主練ということになった。会えないのは寂しいが仕方がない。
「着いたよ~」車から降り到着したのは、都内某所 ピアノ販売店。
なにもありませんように、なにもありませんようにと願っているのは俺だけだろう。
綾小路東雲と言えば元彼氏……。
寄りを戻そうというメールが最近増えたのもきっとこのためだろう。
すでにバツイチで子どもも二人いて、奥さんのところにいるとのことで会えなくて寂しいとかなんとか連絡が来る、そして極めつけには『慰めて♡』だ。
これ絶対に俺今日掘られるなぁ~なんて考えてしまっている。
「九条さんお願いがあるんですけど」
「ん?」
お店に入る前に九条さんを引きとめた。
❁他
youtube
https://youtu.be/VayIIECh2zw?si=mpYe2k_rGY50a2Ph
❁枝浬菰専用サイト
https://sites.google.com/view/creation-bl-novel-eriko/%E6%96%87%E5%AD%A6%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%9E%E6%9D%B1%E4%BA%AC39/%E3%81%8A%E9%A1%8C10%E4%BD%9C%E5%93%81/%E5%9B%9B%E3%81%A4%E8%91%89%E3%81%AE%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC?authuser=0
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