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君が選ぶベッドは最高級だ
俺の名前は高嶺暁 。
快眠だけを求めオーダーメイドを作る株式会社高級サロンの入社を決め早八年が経った。
この会社で主に取り扱うものはマットレス、枕、掛け布団といった寝具だ。
新入社員ではベッド一式の知識をたたき込まれたのち配属されたのは一流ホテルのベッドメーキングだった。
雑用と言われてもおかしくはないがホテルに寄って取り扱うマットレスは違い、温もりや弾力そういうものを知ることができた。
年月がたち俺はようやく【特別営業】につくことができた。
この特別営業というのは社員の中でも一流を極めていてなおかつお客様の心情や素振りなどでよりよいものを選択しなければいけない仕事なのだ。
誰でも慣れるわけではない。
社長、部長、地域マネージャーの試験に合格をしないと慣れない特別な仕事だ。
そして今お客様としてお見えになっているのが地域マネージャーである服部 さんだ。
この方は社内でも人気のあるイケメンで、一言でいうと高身長の爽やかイケメン、さらっとした髪にほのかな笑みをこぼし女性社員を顎くいしただけでその場の女性を虜にしてしまう男なのだ。
「服部様、こちらのマットレスはいかがでしょうか」
「今日は仕事で来ているから敬称はいらないよ」
「かしこまりました」
そう言われても、目上の人だ、素振りには気をつけていないと。
「では服部さんいかがでしょうか」
「うん、少し柔らかいかな、私はもう少し硬いほうが好き」
「かしこまりました、では十四番はどうでしょうか?」
と服部さんを十四番のマットレスに連れて行った。
特別営業が使用している建物には六階から八階までを仕事場としてマットレスから枕、掛け布団などいくつもの種類が並べられている。
お客様の体にフィットしたものを選択し一日かけてでも快眠ベッドを探すのをお手伝いする仕事だ。
「うん、これは中々寝心地がいいな、少し反発してくるあたりとてもいい」
「ではマットレスは十四番にします」
「うん」
「ですが社員寮の俺のベッドのほうが硬さはフィットしていますね」
「おや、これはなにかの牽制なのかな?」
「あ、いえ申し訳ございません、快眠ベッドとなるとこちらも燃えてしまって……」
「ふふっ君は面白いな、でもお客様に失礼をしてはいけないよ」
「はい……」
やってしまった。
だってこの硬さのベッドは俺の部屋のほうが本当に気持ち良いし、廃盤になったから紹介はできないけど……。
「あ、仕事に戻らないと」
「では、またお時間がございます時に枕選びをしましょう!」
「うん、そうだね」
服部さんは帰って行った。
ひとまず十四番のマットレスの手配をしないといけないから六階から社員寮の十二階へと移動する。
事務作業は全て社員寮で行っている、仕事の時は全室開放するのがルールで定時になるまではお互い見張りをしながら仕事をしていた。
そろそろ夕会も始まる頃か、イヤホンを耳につけた。
『お疲れ様です』
『お疲れ様』
夕会に参加しているのは十三人、多いと言えば多いかもしれない。
事務作業メインと特別営業は同じグループだ。
夕会が後半にさしかかったところで俺の部屋には誰かがやってきたのだ、追加の書類かと横を振り向いたとたん後ろをすっと通り寝室のほうに向かうではないか。
「え?」
『高嶺くんなにか意見かな?』
「えええええ!!」
と俺は猛烈に反応してしまった、こればかりは夕会に参加している全員は驚きを隠せず全員無言になった。
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