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憧れの人 試し読み

にひっ笑顔は俺だけのものだけどな……って俺どんだけ奏太のこと好きなんだよ、めっちゃ好きだ、早く告白して俺だけの物にすればよかった。 離れてからは悪夢ばっか見るし喧嘩にも負けるし、頼りなさすぎなところも風の噂で聞いただろうし本当に嫌だった。 「なぁなぁ瀧澤ってどうして小笠原と離れたんだ?」  おいおい、俺の嫌なところつくなよ。 「あーわかんね、気づいたら無視されてた」 「まじか、小笠原って基本みんなに対して優しいイメージで仲間思いな感じがしたから絶対にそれはないって思ってたのに、なんかちょっとイメージ崩れしちゃうな」 「あ、まぁ、そうだな」 「なぁなぁ、もしも小笠原が目の前にいたらどうする? やっぱ喧嘩する」 「あー一発殴るかも」 「理由も聞かずに?」 「まずは一発殴りたい」  理由を聞かずにだ、奏太は教えてくれるのだろうか、下手したらすぐに俺の元からいなくなりそうで怖い。  もう目を逸らされたり無視をされたりなんてことされたくない。 「瀧澤、お前小笠原いなくなったの結構痛いんだな」 「まぁな、ずっと一緒につるんでたし」 「どんくらい?」 「小学後半くらいかな、俺元々いじめられっ子でさ、奏太が助けてくれなかったら橋から落とされてたかもしれないし」 「へ、へぇいじめってそんな怖いこともするんだ」 「やばいやつは、まじで殺人レベルだからな」 「で、その時の救世主が小笠原奏太ってやつなんか、なんか良いな」 「ああ」 次の授業は移動教室だ、そろそろ本鈴もなるのに同姓同名の男は一人席に座っていた。 少しだるそうにしていたが俺には関係ない。 小鳥遊と合流し近くに座り本鈴が鳴った。 しかしその授業には来なかった。 授業が終わってクラスに戻ると彼はいなかった。 まさかな……。いじめか?  とも考えたが入学してまだ一週間しか経っていないのにもういじめが発生するのかなんて怖いことは考えたくもない。 俺に起きた小学生のいじめは橋から落とされるところだった。 もう昔の話だ、忘れろ……。 「あ、小笠原戻ってきた」  先生に事情を話していた。 「保健室行くときは誰かに伝えろよ」と聞こえたので具合が悪かったのであろう。  たしかに誰かに伝えろよとは思うけど友達もいないぼっちにそれは難しい課題ではないかと思ってしまう、だからといって俺が仲良くするのもなんかおかしいし、ていうか俺入学式の時の浮かれ気分を返してほしいくらいだ、まさか同姓同名がいるなんて思いもしないだろ。  席に戻るところを見ていたら足を引っかけられたのか派手に転んだ。 「うっ……」 「おい、大丈夫か」 「すみません……」  悪くないのに謝っちゃって、あそこのやつらだな、本当に人で遊ぶなんて頭おかしいだろ。  って自分か、助ける助けないにしろ、俺は今足を出したやつらを責めていない、その時点で同罪だ、この教室にいて今の瞬間を見たやつはみな同罪なのだ。  席に座り教科書を広げるも濡れていた。  あーもう斜め前の前の席にいるから視界にどうしても入ってしまう。  近かったら教科書見せてあげられたのに……。  それでも彼はその濡れた教科書を広げていた。  昼休みに入り学食に行かないかと小鳥遊に誘われ付いていく。 「お、俺今日は唐揚げ定食にしよっと」 「今日はって昨日も唐揚げ食ってなかったか?」 「いいの、俺の大好物なんだから」 「ふーん」  俺も唐揚げ定食にした。   だいたい普通に唐揚げって美味いから最高なんだよな。 続きは文学フリマ東京39にて!

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