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そのドアをあけてはいけない
僕の名前は稲福真木 大学一年生。
ひとり暮らしを始めドキドキの入学式が終わりもうすぐ夏がきます、夏がくるんだけど……。
どうやら僕はストーカー被害にあっているよう。
ポストには溢れんばかりの手紙やチラシ、ピンポンダッシュのようなこと、時折非通知からは「はぁ……はぁ……」と荒い息の電話がかかってきたり、本当に日々怖くて学校に行けなくなる。
そんな中親友の宗像和典 が近くに引っ越しをしてきて大学まで一緒に登校してくれると約束をしてくれた。
本当に優しくて頼りになる。
ストーカー被害のことも話すと力になるよと言ってくれました、でも和かずが好きな怪談話を一緒に聞きに行くことになったのも今回からの話しなの。
「おい、なに落ち込んでるんだ」
そう言ってくる僕よりも背の高い和は楽しそうにはしゃいでいた。
「だって……。僕言ったよね、ストーカー被害にあっているって」
「うん、だから対策として他の人のストーカー被害を聞いてみればなにか分かるんじゃないか?」
「そんな……その話しが怖かったら夜眠れないよ」と駄々をこねても無駄で会場についてしまった。
「怪談ライブ初めて来たけど明るいもんだね」
「そりゃー始まってないからな、いいぜしがみついてきても」
和はにひっと笑っていた、なんとも頼もしい。
仕方ない、頼りにしてるよ。
指定の席に座り、開演を待つ。
『えーではこれから話すのはとあるストーカー被害にあった女性の話になります、皆様ごゆっくりとお過ごしください』
そういうと部屋が暗くなり和の袖を握った。
はぁー怖い……。もう帰りたい……。
『そこで女の人は悲鳴を上げるのです、ですが女の人の後ろには誰もいません、悲鳴で逃げてしまったのかそれとも……女の人は後ろを振り向くと見知った顔の男が立ってい……』
「いぎっ……」思わず声を出してしまった。
和の袖ではなく腕にしがみついて身を寄せてしまう。
「ちょっしー」僕は首をぶんぶん振るしかなかった。
『失礼、男が立っていてなにやら振り構えているではありませんか、女の人は驚いて逃げようとするも頭に衝撃が走り目の前が暗くなります……』そう言った後部屋が明るくなり『十分間の休憩を挟みます』とアナウンスが流れた。
「はぁー、真木大丈夫か?」
僕の体はガクガクと震え和に助けを求めていた。
「駄目そうだな、んじゃぁ帰るか」
「へ? だっていいの結末は?」
「真木知ってるか、結末を知っているのと知らないとでは恐怖度って違うんだよ」
「え、そうなの? ……じゃぁ最後まで聞く」
「偉い、偉い」
頭を撫でられたが僕はふと「トイレに行きたい」と告げる。
「おう、行ってこい、あと五分くらいしかないけど」
「た……立てない……」
「お……まじか、なら俺と一緒に行くか」
『全員お揃いのようですね、それでは早いですが再開します』
そう司会者が言うと部屋が暗くなった。
「もうちょい我慢できる?」
これは仕方ないので「うん」と返した。
『では後半……女の人は見知った顔の男に頭を殴られそのまま車に乗せられました、そして廃屋につくと体にむしゃぶりつきました、それも獣のように食いつくのです、これは人ではなかったのです、ではどうして車に乗せられたのでしょうか?……』
講演が終わり僕たちは帰路につく。
「いやーまさかオチが共犯がいたからだったとはなぁ、なんかホラーっていうよりもよくある殺人事件の話しみたいだったなぁ、なぁ真木」
「うひっ!? ぼ……僕は怖かったよ」
「ああ、そう、ならいいけど……」
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