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第7話
雪が朝食の後片付けをしている間に潤は身づくろいをし、大学へ行く用意をする。
潤は見た目はチャラいが頭がよく通う大学も有名校だ。このマンションから徒歩で行ける距離にある。それでもいつもは朝早くの講義にはギリギリなのだが、今朝は雪のおかげで余裕で間に合いそうだ。
「雪、俺、大学行ってくるから、大人しくここで留守番してろよ!」
リュックを手に潤が言うと、洗い物をしている雪が慌てて飛んでくる。
「待ってよ、潤。俺も一緒に大学連れてって」
「はあ?」
「お願い、潤の大学行ってみたいんだ」
泡だらけの手を組んで頼んで来る。
潤はバスルームからタオルを持って来て雪の手を拭いてあげながらきっぱりと断った。
「だめだ。おまえは留守番」
すると雪はじとーんとした目をして。
「ふーん。分かったよ。じゃ、俺このマンション中の人に俺は潤の恋人だって言って回ってやるから」
「おい!」
「決まり。大学へ連れてってくれるよね。大丈夫。余計なことは言わないから。従兄弟だってことにしとくから」
「う~~~~~」
潤は唸った。が、変な噂をマンション中にばらまかれたくない。隣の部屋の住人からあり得ない種類の食材を借りて来た雪だ。一人部屋に残しておくと何をするか分からない。
そう考えた潤は渋々だけど、雪の同行を許した。
「わーい。じゃ、早く行こ」
「おい、その格好で行くのかよ? 外は寒いぞ」
考えてみたら雪うさぎの雪にそんな気遣いは無用なのだが、彼が今着ているのは薄いTシャツ一枚と舌はハーフパンツだ。見ている潤の方が寒くなって来る。
「平気だよ、俺は寒いのも暑いのも平気なスーパー雪うさぎなんだから」
「見ている俺が寒いし、悪いことしている気になるから、上着来てくれ。俺のだからだいぶ大きいと思うけど」
クローゼットから適当なコートを選んで着せると、案の定ぶかぶかだったが、仕方ない。
「わあ、潤の匂いがする~」
「これもして」
潤がマフラーを巻いてやると、雪はにっこにこ。ご機嫌だ。
「ありがとう、潤はやっぱり優しいね。大好き」
「男に好きって言って貰ってもうれしくないよ。……って、いけね、結局ギリギリだ、行くぞ、雪」
「はーい」
こうして二人は騒々しくマンションの部屋を後にした。
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