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第3話 甘いキス
俊がディスクを漁っていると、不意に哲から手を取られ、リビングに隣接しているサンルームに連れていかれた。
そこはこの家を建てる時、哲が俊のためにこだわり抜いた箱庭だ。
晴れの日も雨の日も、夏の日も冬の日も、俊は日光浴をするために、哲が用意してくれたそこで仕事をするのだ。
俊はその中央に鎮座するソファベッドに押し倒された。
「いいや、こっち」
否は言わせないとばかりに、俊の唇を塞いでくる哲のそれはとても熱い。
口内に厚い舌が侵入すると、それを伝って哲の唾液が流し込まれる。
花食みの体液は花生みの栄養だ。
哲の唾液は砂糖のように甘い。
酩酊を感じるほどに甘美なそれに夢中になりそうになるが、ここは外が見えるサンルームだ。
庭のガーデニングが目隠しとなり、敷地の外からは見えないようになっている。
夜、月明かりに照らされながらここで熱を交わしたことはあるが、それは暗かったからだ。
「ちょっ……、まだ日中!」
加えて、雨で暗く視界も悪いとはいえまだ時刻は夕方にもなっていない。
こんな時間から体を求め合うのは恥ずかしい。
「明日も休みだからいいだろ。ね?」
キスの合間にそう囁かれる。
おねだりが甘い哲の体液のようにとろりと耳に吹き込まれた。
それに、俊の理性は呆気なく白旗を上げた。
こんなに煽られて、甘えられて、応えないなんて無理だ。
「お世話、してくれるならいいよ」
花を生み出すと怠くなり、睦み合うと腰がやられるため動けなくなる。
そのすべてに責任を取ってくれるのかと問うと、哲は俊の手の甲に恭しく唇を落とした。
「もちろん、俺の愛しい瑞花」
胸がきゅっと締め付けられるように切なくなり、俊は堪らず哲の頭を引き寄せてその唇を貪った。
触れ合い擦れる舌は快感を手繰り寄せ、全身に広がっていく。
哲の舌をじゅっと吸って甘く滴る唾液を吸い尽すと、さらにそれを求めて舌を伸ばす。
舌の裏側にある唾液腺を突くと、哲はぴくりと身じろぎをして鼻に掛かった息を漏らした。
俊が執拗にそこに触れるものだから、すっかり性感帯となったのだ。
哲が感じている。
そう思うだけで堪らない気持ちになる。
俊は衝動のままそこを突いて舐め回すと、じわじわと唾液が滲み出てくる。
それを夢中で舐め取っていると、ずるいと言うように哲の舌が怪しく動いた。
哲の手が頬に添えられると、上の奥歯のあたりを後ろから前へと圧をかけられながら押される。
俊の耳下腺からじゅわりと唾液が溢れ出た。
口内の奥へと捻じ込まれた舌にそれを残らず舐め取られる。
連理の花枝の契りを交わした花生みの体液は、花食みには花生みが生み出す花と同等に美味に感じるのだ。
お返しとばかりに口内を犯され、息苦しさの中に愉悦を感じた。
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