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第8話 サムとの蜜月
史哉は日本に帰ってきていた。
エイリアン用のランジェリーは好評で、継続して制作してほしいと各星人から依頼が殺到している。
お陰で仕事のスケジュールは向こう五年はみっちりと埋まっている。
意図せずサムに抱かれたあと、史哉の迷いを察したであろう彼は、それはもう砂を吐くほどの甘く蕩けるような言葉を並べてきた。
仕事はそれまで対等に取り組んできたが、一度プライベートに切り替わるとびっくりするほど献身的に史哉の世話を焼いた。
そんなことをされて絆されないわけがない。
史哉はサムの求愛を受け入れ、彼に注がれた愛情を倍にして返していった。
そんなわけで、結局、エイリアンが地球で住めるような環境が整うまで某国の軍事施設で生活し、毎晩サムに愛された。
そして、とうとう史哉は日本に戻ってきた。
サムのためにひとまず鉄筋コンクリートの住居に移り住み、部屋ごと丸洗いできるようにした。
加湿器もたくさん買った。
「日本もいいな。特に今、梅雨の時期は」
「加湿器つけなくても湿気凄いからね」
「湿気は嫌い?」
「サムといれるならどんな環境でも平気だよ。ねえ、今日はどれにする?」
二人で入浴したあと、史哉は脱衣所に設置している棚の引き出しを二つ開けた。
そこにはぎっしりとランジェリーが詰まっている。
すべて史哉が手掛けたものだ。
「うーん……。今日はこれかな」
サムが手に取ったのはラベンダーピンクのメンズブラとジョックストラップのパンティだ。
そして、もう片方の手で同じラベンダーピンクのボクサーパンツをぎっしりと詰まった引き出しから引き抜いた。
ちなみに、史哉のメンズブラとジョックストラップは綿百パーセントだが、サムのボクサーパンツは伸縮性と通気性に優れたルルニコテミソ星から輸入された特殊な素材だ。
二人は揃ってパンツを履き、史哉のメンズブラジャーはサムに着けてもらう。
着せるのがサムであれば、脱がすのも同じくサムだ。
「ご飯はウリヌココヒブでいいよね」
史哉はパジャマにで伸ばし、今日の夕飯の相談をする。
ウリヌココヒブはサムの故郷の味の料理だ。
史哉がオリジナルを食べると腹を下すため、地球の素材で、史哉に合った味付けにはしているが、ベースは変えていない。
サムもいつも満足そうに食べている。
二人で作る段取りを頭の中で組み立てていると、サムからパジャマを取り上げられた。
「ちょっと」
「ご飯よりフミを食べたいな」
甘えるように擦り寄られ、耳にキスを落とされる。
たったそれだけで全身が粟立つ。
史哉は待てのできない獣の口を手で塞いだ。
「さっきも散々食い散らかしたくせに」
「嫌か?」
サムが挑戦的な眼差しを向け、見せつけるように史哉の手をねっとりと舐めた。
「まさか。喜んで」
艶かしい舌が見え隠れするサムの口に背伸びをしてキスをすると、長い舌が史哉のそれに絡まった。
史哉の腰が抜けるほどキスを繰り返し、力の抜けた史哉を軽々と抱えたサムは意気揚々と寝室へと向かった。
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