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前編

 目が覚めたらそこは見覚えのある場所だった。  いや、見覚えというか、俺が昔住んでいた町だった。  なんでだ。  まだお盆じゃないんだけどな。  というか、お盆はまだあと1ヶ月も先なんだけど。  しかも、寝ている間にこちらの世界に飛ばされていて、自分の意志で来たわけじゃないし。  まぁいいか。すぐあっちの世界に帰れるだろうし。  帰るまでの間、久しぶりにこの田舎町を探索しようかな。   そう。  俺、雨野航太は死んだのだ、7年前に。  7年前、まだまだ青春時代真っ盛りの中学2年のとき、部活帰りの薄暗い道路で車に轢かれて、打ちどころが悪かったのか即死だった。  即死だったので、あのよく聞く三途の河というものには残念ながら遭遇出来なかったけど、天国と地獄は本当にあることを知った。  そして今、俺が暮らしている場所が天国。  天国はほんとに快適すぎる。  まず、季節というものは存在しない。  だから、暑い寒いなんていう温度の寒暖差が全くない。  1年中、快適な気温なのだ。  そして食べたいもの、やりたいことお願いすれば、神様が叶えてくれたりする。  そうだ。神様に何で今俺がここにいるのか聞けばいいのか。  で、そのまま天国に帰らせてもらおう。  俺はお盆の間の一日しかこっちの世界には来ないんだし。  まだお盆じゃないから早く帰りたい。  俺は日が落ち暗くなり始めてる空を見上げ、神様に届くよう念じた。  おーい神様!  何度も神様を呼んだが一向に返事がないんだがどういうことだ。 『あっ、来た来た。こっち』  もう一度神様を呼ぼうと空を見上げた俺は、1メートル先から聞こえた人の声に、神様を呼ぶのを中断した。  あいつ…。 『おー!浜!』  やっぱりあいつ浜だよな。  おぉ、こんな偶然あるのか。  しかも、もうひとりは田中じゃん。  久しぶりだし、ちょっとあいつらの所に近づいてみるか  浜と田中。  俺の中学の時の同級生、そして部活仲間、仲良くしていたやつだ。  中学の頃より、背はやっぱり伸びてて、俺の中学2年、14歳で止まったままの身長より10センチ以上高い。  顔つきも大人っぽくなっている。  大人っぽくって、もう21だもんなー。  でも面影はある。声もあの時とさほど変わってない。  だから、すぐわかったんだけど。 『お、三坂も来たかー!』  もう一人の人物はあの頃よりもかなり変わっていて、名前を言われるまで気づかなかった。  三坂拓海。  三坂とは一番仲が良かったと思う。いつも一緒だったし。  それこそ部活も、一緒のサッカー部。  クラスも1年のころから一緒で、学校の登下校も一緒だった。  ただ、俺が事故にあった日は、三坂は生徒会の仕事で遅くなるからと一緒に帰れなかったんだが…。  てか、高っ。  身長何センチなんだ。  俺は三坂の顔をじっくり見るため、見上げた。  うわー。  なんか肌スベスベだし、目、鼻、口、とパーツひとつひとつが全部整ってるし。  髪なんかも茶色に染めて、綺麗にセットしてる。  またその髪型が似合ってるんだよ。  なんかうん。めちゃくちゃイケメンになってる。  いや中学の頃も女子からめちゃくちゃモテてたけど、あの頃より大人の色っぽさっていうの?セクシーさがプラスされて、もう何か別人だ。  じっーっと三坂の顔を凝視していた俺は、三坂と視線が合い、慌てて逸した。  いや多分、視線は合ったが、俺のことは見えてないはず。  三坂が霊感強いとは聞いてないし。  俺はとりあえず、三坂たちの後をこっそりついて行った。

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