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第三章 帰還⑤

「マティアス様っ!」  さらに人垣を掻き分け飛び出してきた人物。   「ロッタ!」  マティアスが姉の様に慕うロッタ。ロッタはマティアスに駆け寄るとしっかりと抱き締めてくれた。 「マティアス様ぁっ! よくご無事でっ……!」 「ロッタ、心配かけたな」 「カイ様が輝飛竜から助けてくださったのですねっ!」 「ああ。でもそれだけじゃないんだ。ウィルには……カイには沢山助けてもらったんだ」  マティアスは微笑みながらウィルバートを見た。横に立つウィルバートが照れたように微笑み返す。その様子にロッタは二人の関係が進んだことを察したようで優しげな笑みを浮かべた。 「あなた、ロッタなの?! マリーかと思ったわ!」 「セ、セラフィーナ様?!」  マリーはロッタの母親の名前だ。二十年前カノラ村で暮らしていた義理姪にセラフィーナが驚き駆け寄ってきた。  その奥でクラウスが人垣からアーロンを見つけ声を掛けていた。 「アーロンお前……なんか、可愛くなくなったな!」  そしてアハハと豪快に笑いアーロンの肩を叩いている。対してアーロンは俯き肩を震わせると「また貴方にお会い出来るなんて……!」と涙していた。マティアスはアーロンが泣いているのを初めて見た気がした。  アーロンは涙を拭うとマティアスにも顔をむけた。 「陛下……。陛下をお守り出来ずこのアーロン・クランツ、近衛隊隊長として一生の不覚にございます……」  アーロンは片膝を付き頭を垂れた。 「アーロン、ウィルが助けてくれた。お前が鍛えたウィルバート・ブラックストンが」  アーロンが驚いたように顔を上げた。 「全部話したのですか……?」 「ん、全部話たし、ついさっき、ウィルは全てを取り戻したんだ」  マティアスは微笑みながらウィルバートを見た。ウィルバートもまたアーロンに歩み寄った。 「お久しぶりです。クランツ隊長」 「ウィルバート……! 記憶が戻ったのか!」  そんなやりとりを横で聞いていたベレフォードが割って入ってきた。 「そ、そんな訳なかろう! 川に流した水は回収できん!」 「ベレフォード様もお久しぶりです。なんと言うか……あの世の狭間から『ウィルバート』を連れて帰ってきた感じでして……」  ウィルバートが頭を掻き困ったように二人に説明した。  その時、人垣が割れ一人の人物が走り寄ってきた。 「マティアス陛下っ!」 「サムエル様……」  名目上、現在のアルヴァンデール王国国王はサムエルであるにもかからず、サムエルはマティアスを『陛下』と呼んできた。  銀縁の丸眼鏡をかけた淡白な顔立ち。輝飛竜やその他生物の研究にしか興味を持たなく、いつも平坦な感情である印象のサムエル。しかしそこにいる彼はすっかりやつれ今にも倒れそうだった。

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