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⑨ 転生に憧れた白猫アルは、転生して幸せを手に入れました
「すみません……。相談したいんですが、良いですか?」
ある晴れた日の朝。
アルが鼻歌を歌いながら店頭の花々に水をあげていると、控えめに声をかけられた。
振り返ると、女性の兎獣人が一人、不安そうに入り口に立っている。
「あ……の、これ、予約の……」
「あ! 予約されていた方ですね。どうぞ、どうぞ。ようこそいらっしゃいました」
アルは出された受付票を確認すると、ライオネルの待つ、奥の人目につかないテーブルへと案内した。
アルとライオネルのドタバタ転生劇から、それなりの月日が流れていた。
ライオネルの職場だったカフェは、書店部分も合わせて大々的にリフォームをした。
街のために、役に立ててほしいと言うのが、ヘレンの遺言だったから。
何に活用しようかと考えた時、転生してくる獣人たちの相談窓口になる場所を作ることにした。
以前と相変わらず、この街は獣人の転生者が度々やってくる。他のところより明らかに多いと思う。
その原因は、神様であるネムが、困っている転生者を放っておけず、自分の街に誘導してしまうからだ。
「レオー。ちょっと飛び入りでお願いした……っと、ごめん。接客中だったね」
まだお店を開けたばかりなので、誰も来ていないと思ったのだろう。
普通にバタンとドアを開けて入ってきたのは、この街の神様のネムだ。
「この次の時間は入ってないから、ちょっと待っててもらえるなら大丈夫だよ。アル、なにか飲み物出してあげて」
奥まった席で先程の兎獣人と話をしていたライオネルはそう言うと、再び女性との対話に戻った。
こんな感じで、相談窓口は一日途切れることなく人がやってくる。
その何割かは、相談ではなく休憩所としてカフェを利用しに来る街の人々なのだが。
けれどその様子を見て、転生者はこの街なら大丈夫だと、胸をなでおろす。
転生してきて新しい住人になった者が、街に馴染み、また新しい者を受け入れる。
ネムの求める、「平和な街」の、幸せのカタチだ。
「あるー、おなかすいた~~」
「ごはんまだ~~」
今日の最後の来客が終わる頃、お店のドアが勢いよく開くと、二人の獣人の子供がアルの胸へと飛び込んできた。
アルに似た真っ白な毛並みでライオネル譲りのフワフワ長毛の子と、ライオネルそっくりのフワフワ茶トラの子。
「はいはい、もう閉めるからちょっとまっててね」
二人をいっぺんにギューッと抱きしめると、奥から出てきたライオネルへと渡した。
「ぱぱぁ~~!」
「あそぼ~~」
キャッキャと戯れる我が子を、愛おしい目で見つめるアルとライオネル。
二人は性別上では同性だけど、間違いなくこの二人の子供だ。
転生してきたばかりの頃、アルは『これから起きることは、そういう事もあるんだなと深く考えずにいたほうが、ここではスムーズにいくのだろう』……と、そんなことを思っていた。
これは実は正解で、この世界では、獣人は性別関係なく子を授かることが出来る。
転生前の世界では考えられなかったことも、ここでは叶えられる。
大好きな『レオ』と生まれ変わって再会して、ありがとうも大好きも伝えられた。
それだけじゃなく、お互いに愛し合いされ、恋人となり、|夫夫《ふうふ》となり、こんなに可愛い子供達を授かることが出来た。
これからも、沢山の夢が叶えられていくのだろう。
ずっとずっと、未来は明るい──。
転生に憧れた白猫アルは、転生して幸せを手に入れました。
おわり
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BLoveさんのコンテスト、テーマ人外ファンタジー参加作品です。
コンテストには参加するつもりは全くなかったのですが、お友達に誘われたのと、なんかみんな楽しそうだったので参加しちゃいました。
ノリと勢いで書いたお話ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
ちなみに。Xのフォロワーさんなら気付く方も多いと思いますが、神様にはモデル?となった方がいます(笑)
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