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災い転じて
それからどうやって家まで帰ったのか、よく覚えていない。
気が付いたら自室のベッドに横たわっていて、60cm程あるクマのぬいぐるみを抱いて天井を仰いでいた。
別にファンシーな趣味があるわけではない。
このクマのぬいぐるみは俺が今最も推しているNaoの限定ライブ配信で勝ち取った世界でたった一つしかないグッズなのだ。
その宝物を抱きしめたままゴロリと寝返りを打つと、無意識のうちに深い溜め息が溢れてきた。
「俺、そんなに駄目だったかなぁ……」
そう独り言ちてみたけれど、クマのローズからその答えが返ってくることはない。
まさか沙希が俺をただの金蔓だとしか思っていたなんて、微塵も気が付かなかった。自分の鈍感さに呆れを通り越して笑いすら込み上げて来る。
見る目が無かった。そう言われてしまえば、そうなのかも知れない。
でも、いくらなんでもあの言い方は無いよな。考えれば考えるほど悶々とした気持ちが迫り上がり、クマのローズを抱きしめる手に力が入ってしまう。
ゴロリと寝返りを打ち、手に当たったスマホのディスプレイが視界に入る。
19:57の文字を見てハッとした。
「そう言えば、今日って……水曜じゃん! ヤバッ」
水曜はNaoの配信日。しかもアーカイブが残らない生配信だ。
ガバッと跳ね起きて、転がるようにベッドから降りた。
それから急いでリビングに置いてあるパソコンを立ち上げて、秒でネットに接続する。
画面が映し出されるほんの数秒間が待ち遠しくて仕方がない。
19:59、画面には期待通りのウィンドウが表示され、それだけで今まで沈んでいた気持ちが急浮上していくのがわかった。
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