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夢か現か ②
「……お前の口から面倒なんて言葉が出てくるなんて。もしかして、カラオケで何かあったのか?」
Naoの手が促すように優しく髪に触れて来て、思わず涙腺が緩くなる。今まで、親にも友人にも学校での愚痴を溢した事なんてなかったのに。
「誰かに話すことで、少しは楽になるかもしれない」
あぁ、駄目だ。そんな事言われたら、涙腺が崩壊する。ツンと鼻の奥が痛くなるのを感じつつ、俺はポロリと、カラオケ店での出来事を洩らしていた。
Naoは肯定も否定もしないまま、俺の言葉に耳を傾けてくれる。
「そっか……。そんな辛い事があってたなんて、知らなかった」
そう言ってNaoがまた優しく頭を撫でてくれる。配信の画面上で見る顔は同じはずなのに、こうして間近で見るNaoは普段の数倍かっこよく見えるから不思議だ。
憧れの人に膝枕されながら、話を聞いて貰えるなんて最高過ぎるシチュエーション。
「そんな奴、気にする事ない。これからは僕が守ってやるから」
「う……ん……」
繰り返し、繰り返し優しく髪を梳いて撫でられ、その心地よさに段々と意識が混濁してくる。
やっぱり、コレは夢。 起きたらきっと、いつもと変わらない日常が待っているに違いない。
あぁ、もしかしたら篠田達に裏切られたのも、紗季にフラれたのも全部夢なんじゃないか? そうだったらいいな。
とろとろと、まぶたが重くなる。頭を撫でる大きな手の感触が、うっとりする程気持ちがいい。
「椎名?」
フワフワと心地がいいNaoの声が不意に俺の名を呼んだ。あれ? 俺、本名教えたっけ?
疑問に感じたものの、強烈な睡魔には抗えず、俺の意識はその辺でプツリと途絶えた。
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