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夢か現か ③
「ん……」
目覚ましが鳴る前に目が覚めた。
ああ、なんか気持ちがいい。ホワホワと安心するし、このまままた眠ってしまいたくなる。
重たい瞼をゆっくり開けたり閉じたりしながら、もぞもぞと温かい方へと鼻先を擦り寄せると、自分の家の柔軟剤に混じって仄かにバラの香りが漂って来る。
なんだか凄く懐かしい。母さんが庭で大切に育てていたバラに囲まれている時みたいないい匂いだ。
「……くすぐったいって」
笑い交じりの低い声が頭上から響いて来る。なんでNaoの声がするんだろう? 此処って、俺の部屋じゃ……。
ハッとして目を開け、俺は目を疑った。
だって、目と鼻の先にNaoのドアップ。
「!?!?!?」
な、なんでNaoが此処に!? いや、その前に俺、Naoの胸元にぴったりとくっついちゃってたんだけど!?
「な、な……なんっ!?」
ビックリしすぎて声が思わずひっくり返る。
「ん、おはよう。椎名」
何が何だかわからない俺をよそに、あまりにも自然にNaoがそう声を掛けて来るから、俺は思わずそのままの姿勢で硬直してしまった。
え、今、なんて? Naoにおはようって、言われた? しかも、この至近距離で!?
いつもヘッドフォンで繰り返し聞いていた「おはよう」が、今は直で俺の鼓膜を擽っている。
Naoの声、いつもより低く掠れた感じで色気が増し増し。しかも、寝起きだからか、ちょっと気だるげな感じがして、めちゃくちゃエロい。
「……ッ」
どうしよ、お俺の心臓、ばっくんばっくん言ってて、今にも壊れちゃいそうなんだけど。これも夢なんだろうか? だとしたら、強烈過ぎる。
思いっきり左の頬を抓ってみたけど、シッカリ痛い。
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