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買い物デート
現場は、物の見事に全てが焼け落ちて、見る影もない。
昨日まで、当たり前にそこにあったはずのアパートが、今はもう跡形もなくなっていて、俺達は思わず呆然と立ち尽くしてしまった。
「……あぁ、コレはもう駄目だな。 これも……」
未だに鼻をつく焼け焦げた匂いの中、恐らく彼の部屋があったであろう場所を数個のゴミ袋片手に見て回る露木君の背中は、何処か寂しげで、悲しい。
俺は掛ける言葉が見つからなくて、ただ、何か使えそうなものが無いか。それだけを必死に探してた。
外に置いてあった自転車はかろうじて乗れそうな状態だったけれど、後のモノは殆どが炭と化している。 その瓦礫の中に、恐らくパソコンだったであろう残骸が見えて、俺は思わず身を乗り出した。
黒焦げのそれは、かろうじて原型をとどめているものの、完全に壊れてしまっている。
「……パソコンも買わないと、か……」
もしかしたら、彼がコレを使って配信していたかもしれないパソコン。
そう思うと、自然と胸の奥がツキリと痛んだ。そう言えば、昨日は寝落ちちゃったし、今日は今日でバタバタしてたけど、Naoのチャンネル、更新の通知来てなかったな。
いつもなら、毎日何かしらの更新があってたのに。
……やっぱり、彼がNao、なんだろうな。
確信に近い、そんな予感。
生配信が水曜日だから、彼がもし本当にNaoだったら、その時にハッキリとわかるはずだ。
今回の件で、きっと何もかもを失くしてしまっただろう彼にとって、これからの事に光明が見える何かを探し当ててあげたくて、俺は更に残骸の中へと足を踏み入れる。
そして、何か使えるものが無いかと、瓦礫の中を探し始めた。
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