26 / 102

買い物デート ②

机やパソコン、電化製品などの大型製品は、かろうじて原型を留めてはいるものの使えるようなものは何一つ残っておらず、落胆の色を濃くする背中に胸が 痛くなる。 「そろそろ戻ろうか」 「え、でも」 「ここに居たって、時間の無駄だ」 確かに、それは正論なんだけど。でも……。 何か、ないだろうか。何時から此処に住んでいるのかはわからないけれど、きっと何か、思い出の品や、写真だって持っていたんじゃなかろうか。 でも、無理に詮索するのだけは絶対に嫌だし、地雷踏んだら目も当てられない。 「これから、買い出しに付き合ってくれるんだろう? 何も残ってないんだから、此処に居ても仕方ないだろ」 強引に背中を押され、俺は後ろ髪を引かれる思いで現場から立ち去ろうとした。その時、視界の端に何か鉢のようなものが見えて、思わず足を止めた。 「どうした?」 露木君の不思議そうな声。 「あれって、露木君の?」 「え?」 俺が指さした方へと露木君が視線を動かす。近づいてみると、模様が入った陶器の鉢が地面に転がっていた。 所々には煤が付いているし、何か植わっていたであろう植物は炭に変わってしまって、もう残骸を留めてすらいない。 でも、鉢だけはひび割れた所もなく、元の形を保っている。 「そっか。焼けずに残ってたのか」 側までやって来て、鉢をまじまじと見つめる。その目は愛しさに満ち溢れていてその鉢が彼の大切な物だったのだと悟る。 「良かったじゃん。大事なものが見つかって」 「あぁ。椎名が一緒に来てくれてよかった。僕はもう、諦めていたから」 ありがとう。なんて露木君が素直に言うから、なんだかくすぐったい様な、むず痒い気持ちになる。でも、こんな風に感謝されるのは悪くない。

ともだちにシェアしよう!