155 / 216

真実は ⑨

……結局あれから何度、抱き合ったのかわからない。ぼんやりとした目で壁の時計を見上げると、 2:50と言う文字が目に飛び込んで来る。 荒い息を吐きながら、汗ばんだ身体で抱き合う。 「さ、さすがにちょっと……。ヤりすぎだって。明日の体育確かバスケって言ってたのに。腰立たなかったらどうしてくれるんだよ」 長距離マラソンでも走ったみたいに、身体が重くて、疲れているのが自分でもわかる。頭の中もぼんやりとしたままだ。 露木君の手が動いて、額にかかる前髪を撫でるように梳いてくれる。 「言っただろ? 僕がどれだけキミを愛してるかもう一度教えてあげるって。まだまだ足りないくらいなのに」 「……っ」 ギュッと俺を強く抱き締めながら耳元で囁かれ、思わず顔が赤くなる。 「それに、環があんまりにも可愛いから、ついね」 そんなの、俺だってそうだ。 露木君に触れられるとどこもかしこも気持ちよくて、もっともっとと際限なく求めてしまう。 でも、さすがにもう無理。 「も……っ、もう、今日はしないからね! 絶対!」 「え~? それは残念」 冗談には聞こえない声色に思わず頬が引き攣る。 こんなの何回もしてたら、俺、死んじゃわないだろうか。 「でも、まぁ……、環のお願いなら仕方ないか」 露木君は、密着させていた身体をそっと離すと、俺の隣にゴロンと横になった。 そして、腕を伸ばして、何も言わずに俺をじっとみつめてくる。 これってもしかして、頭をその腕に載せろって事? 「え、と……こう?」 おずおずと露木君の腕に頭を乗せれば、嬉しそうに笑った露木君が、俺の身体を引き寄せて、抱き枕みたいにそのままぎゅっと抱き締めてくる。 「ちょっと暑いね」 「そりゃそうだよ。もうすぐ7月だもん」 いくらクーラーを付けているとは言え、大人体型の二人が一つのベッドで密着してたら暑いに決まってる。 「ん。でも、こうしてたいから」 甘えるように言われて、俺は思わず黙り込む。 こうやって露木君に求められるのは嫌じゃない。 むしろすごく嬉しくて幸せな気分になるんだから、俺って結構ちょろいのかもしれない。

ともだちにシェアしよう!