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初めての…… ⑫
その後、露木君に支えられながら脱衣所に戻り、タオルで身体を軽く拭いてからベッドに移動した。
てっきり、そのまま押し倒されるのかと思ったけど、露木君は俺をベッドに横たえると隣に寝転んで俺の身体を抱き寄せた。
露木君の体温に包まれて、ホッとすると同時に心臓がドキドキと早鐘を打つ。
……どうしよう。なんか、緊張してきたかも。
今まで何度も抱き合ってきたけど、今日はいつもとは違った意味で緊張していた。それはきっと、ここがいつもの部屋じゃないからだろうか。
いつもと違う場所で、しかも裸で抱き合うなんて初めてだし。
でも、一向に露木君から何かアクションを起こす気配はなく、ただ優しく背中を撫でているだけだ。
それが余計に落ち着かない気持ちにさせて、俺はもぞもぞと身動ぎをした。
「ん……、どうかした?」
「……別に、何でもない」
「そう?」
露木君はそう言って小さく笑うけど、やっぱりそれ以上は何もしてこない。ただ黙って俺を抱きしめているだけだ。
一体、何を考えているんだろう? 確かに手が完全に治るまではシないって約束だったし、なんならさっきお風呂場で……。
「……っ」
ついさっきあった出来事がフラッシュバックして、ブワッと体温が上がった気がした。思わず顔が熱くなる。
でも、あれっきりで最後まではシてないし、こんな場所に来て何もないなんて、やっぱりちょっと物足りないというか……。
いや、別に物凄くシたいとかじゃないけど! ただちょっと……ちょっとだけ寂しいというか。
「環?」
黙り込んでしまった俺を見て心配になったのか、露木君は俺の顔を覗き込んだ後、額同士をこつりと合わせてきた。間近で見つめられて心臓が大きく跳ねる。
露木君はさっきのアレで満足したんだろうか? 物足りなさを感じてるのって俺だけ?
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