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『⋯⋯私に拒否する権利はありません。むしろ、いて頂けたらと思います。私一人では大河のことを構ってあげれる余裕もなくなると思いますし、安野さん達に教わりたいことがたくさん──』
『まあ! なんとありがたいお言葉! 私の粗末な耳に姫宮様の綺麗な声に乗せられた素敵で、私のような下々を気遣うようなことを仰って! もうっ、とても嬉しく思います!』
『っ!』
姫宮の言葉を遮ってまで言った言葉の勢いと共に抱きしめられた。
今までと変わらない一気に捲し立てる勢いに気圧されていたのもあったが、抱きつかれるとは思わなく、呆然としてしまった。
安野のすぐ後ろで控えていた今井が先ほどから言いたげにわなわなと口を動かしていたが、抱きついた瞬間、片眉をこれでもかと上げ、我慢ならないとすぐさま引き剥がそうとするものの、安野のがっしりとした腕はぴくりとも動かなかった。
そのうち上山と江藤も応戦し、それでもてこでも動かない安野に痺れを切らした今井が最終手段だというように、「離れなさい」と容赦なく叩くが、猫がじゃれている程度にしか思ってないのか、何とも思ってない。
安野のすぐ後ろで広がる特に今井の凄まじい怒りに、見ていることしかできない姫宮は内心ハラハラとし、さすがにこれではまずいのでは思い、それに、離したくないと回す腕の力に身体が悲鳴を上げ始めていたのもあって、控えめな声で掛けようとした時。
『改めてよろしくお願いしますね!』
やはり叩かれていることも引き剥がそうとしていることも何とも思ってない安野が満面な笑みで、そんなことを言ってくるのだ。
後ろの殺意に満ちた顔ぶれとのあまりにも非対称なその光景に、姫宮は思わずの感情が零れた。
『⋯⋯こちらこそ』
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