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あの時の安野達の顔を思い出すと、何故そのような反応をするのだろうと首を傾げそうになる。
まるで、鳩が豆鉄砲を食らったような、ぽかんとした顔。
自分の顔になにか付いていたのだろうか。それとも、変な顔をしていたのか。
せめて少しでも安野達の手伝いをしようとしたものの、上手い具合に誘導され、着席し、朝食が来るのを待つ係を任されてしまった。
係なんて大それたように言って、こんな子ども騙しもいいところな言い回しをされて、こんなことであれば、寝坊しなければ良かったと思えてしまう。
眠りが浅いのをどうにかしないとと、安野達の「ねぇ、江藤さん、いつの間に姫宮さん呼びになったの!」という話題をぼんやりと聞きながら、目の前のテーブルの模様をただ見ていた。
「おはよーございます」
緩い声が聞こえ、ハッとして顔を上げる。
そこには、我が子である大河を抱きかかえる小口の姿があった。
このような光景も毎朝の当たり前となったが、毎回見る度に年の離れた姉弟のように思えてならない。
「おはようございます、小口さん。おはよう、大河」
前よりも上手く笑えていると思う顔でそれぞれ挨拶をした。
小口は特に反応を見せなかったが、大河が小さく口を開けた。
驚いているのか。とそう思っていると、ふいっと顔を逸らされる。
「相変わらずですね、大河さまは」
「いいえ、いいんです。仕方ないんです」
ちゃんとした顔ができず、変な顔を見せてしまったせいで驚かせてしまったのだと真っ先に思ってしまったが、他の理由かもしれない。
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