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「また騒いでますよ、ぽんぽこたぬきの安野さんが」
「私のせいで、すみません⋯⋯」
「安野さんが姫宮さまのことで異常に心配してぎゃーぎゃー騒いでいるのはもはやテンプレで、見ていて滑稽ですよ。大河さまも見てください、安野さんが三点倒立してますよ」
「えっ」
思わず振り返った。
が、すぐにそれが小口の嘘だと分かり、しかし、安野が土下座をし、今井に説教されている様子を見てしまった。
「姫宮さま、引っかかりましたね」
「安野さんがどういう状況で、そのようなことをしているのかと思いまして⋯⋯」
「確かにどういう状況でそんなことをするかと思いますけど、三点倒立する安野さんはただ見てみたいですね」
思いきりではないが、面白いと小口が笑うのを姫宮もつられて控えめに笑った。
安野が実は意外とできるのかもとか、できないけど一生懸命やろうとしている想像を安易にしてしまい、彼女には失礼だが面白いと思ってしまった。
と、小口と話が盛り上がっている間でも、大河はそれらを見向きもせず、目の前に置かれたおにぎりをちまちま食べていた。
ハニワのプレートをじっくりと見ているようなその視線に、本当にハニワが大好きだなと目を細めた。
「大河、ハニワのプレートを見ているの? 大好きだね」
「⋯⋯」
相変わらず、何の反応をしない息子にそれでもめげずに話を続けた。
「あ、大河。朝ご飯食べ終わったら、ママと遊んでもらってもいいかな」
「⋯⋯」
次にフォークで差した玉子焼きを食べる動きが止まった。
これはどういうことなのか。
目を丸くしたまま姫宮も固まっていると、大河は何もなかったかのように食べ続けた。
一瞥すらしないということは、姫宮とは遊びたくはないのかと思った。
大河の照れ隠しだとは小口は言っていたが、そうであっても反応してくれなければ落ち込む。
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