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急いて、周りのことも気にせず、変なことを口走ってしまった。
大河のことで気に病んでいたはずなのに、そんなことを上回る恥じたことを思い出してしまい、顔から火が出るほど恥ずかしさでいっぱいになった。
「姫宮様、急に顔を赤くされてどうされたのですか!? ハッ、もしかして発情期 が近いのですか! 確かご予定ではまだだったはずでは⋯⋯」
「い、いえっ、これは違うんです⋯⋯っ!」
「でしたら、熱でございますか! 姫宮の目の下がややクマのようなものに見えますが、それはもしかして寝られていなく、それが原因で体調を崩していらしていて、しかし言わずに無理をしていたのですね! そんな我慢しなくていいですから、寝ていてください! ご飯は食べられますか?」
「寝れてないのはそうですけど、熱ではありませんので、大丈夫です! ご飯も一人で食べれますからっ」
ちょうど姫宮と大河の分の朝食を持ってきた安野に見つかってしまうタイミングの悪さ。
彼女が心配してくれる優しさは感じられるが、毎回のことながらそれをどう回避するかが問題だ。
声を張って、大丈夫だと言っても今までの言動から心配せずにいられないようで、「本当に、本当ですか!?」と顔をぺたぺた触ってくる。
と、そんな時、騒ぎを聞きつけた今井が「何をしているんですか」と凄みを聞かせた声で割って入ってきた。
「 だって、姫宮様のお顔が芳しくないのですよ! いても立ってもいられません⋯⋯!」
「そうですよね気になる様子ですと心配なるのは分かります。よーく分かります。ですが、前にも言ったでしょう。安野さんは度が過ぎます。もー少し、ほんのすこーしでもいいので、いや、八割ほどでいいので落ち着いた態度で接してください。毎度毎度、姫宮様の言葉を遮らないでください私の仕事を増やさないでください」
怒涛の勢いで捲し立てる今井に、「分かってます⋯⋯すみません⋯⋯」と小さくなる、かと思いきや、「ですが!」と言い訳し始める安野に、「でももすももありません!」と返す二人から逃れるように、大河の方を向いた。
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