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「全く急にどうしたんですかねー」 いつの間にか安野と今井は自分達の仕事に戻り、一人となった小口がやれやれと呆れた口調で首を振っていた。 何の脈絡もなくあのようなことをしてきたが、何か言いたかったのだろうか。何を伝えたかったのだろうか。 「あの、小口さん」 「はい?」 「小口さんって、大河の言いたいこと全部分かるんですか?」 「何急にどうしたんですか?」 「あ、いえ、気になることがあったので⋯⋯」 「大河さまが姫宮さまに何か話そうとしていたことですか?」 目を瞠る。 「何故分かったのかという顔をしてますね。先ほどのことを見ていたんですよ。安野さんといつまでも言っていてもつまらないので」 「そういうことなのですね」 「先ほどの質問の答えとなりますが、全てが全て分かるわけではないですよ。その姫宮さまに何を伝えたかったのかも分かりませんし、思っていたこととは違うことを言って、大河さまご機嫌ナナメになるんで」 前に描いていた絵に対して、「またハニワ描いているんですか〜?」と小口が言った時、付けっぱなしにしていたテレビを指で差していたやり取りを思い出した。 テレビの方を見ると動物番組をやっていたようで、その時ちょうど大河が描いていたらしい、プレーリードッグが映しだされた。 ハニワとプレーリードッグの共通点は少なくとも茶色の部分であろうか。そのことに関しては、思いっきり指差してこれだと主張する大河に同情したが。 「まあ、全ては分からずとも毎日のように一緒にいたら分かってくるんじゃないでしょーか? 単純なところはあるかと思いますし」 「そうですね⋯⋯」 「もし、普通に喋れたとしても全部分かるわけないですよ。それだって結局口にしてくれないと分からないものですし。今もわたしと姫宮さまのお互いに思っていることは分からないでしょう?」 「はい、そうです──⋯⋯」 小口の諭す言葉に思わず頷きかけたが、留まった。 他人が思っていることを察しても無駄だと思っていた頃があったが、この一年経とうとしている頃合いで特に大河と小口と共にいることが多かったのもあるが、小口の思考は多少なりとも読めた。

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