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16.
「⋯⋯小口さんは、暇さえあれば寝ていたい、ゴロゴロしていたい、できることならば働きたくない⋯⋯と思っていそう、だなって⋯⋯多分」
「⋯⋯それ、本当にそう思いました?」
「多分の話です。多分⋯⋯」
「合ってますよ、全問正解。姫宮さまはサトリか何かですか?」
「さとり⋯⋯?」
悟り、悟れているということだろう。
口元を覆って、大袈裟に驚いてみせる小口に、何と反応すればいいのか分からない姫宮は、曖昧な笑みをすることしかできなかった。
「先ほどわたしが口にしていたというのもあるのでしょうが、それにしてもわたし、そんなにも口にしていましたっけ? そんなに単純じゃないと自負していたんですけど」
「ま、まぁ⋯⋯そう、ですね⋯⋯」
「こんな話をしているよりも姫宮さま、朝食を召し上がってくださいな」
「は、はい⋯⋯」
先ほどから食べ損ねている朝食のことを促され、「⋯⋯いただきます」と口にした。
やはり冷めてしまっているが、それでも美味しい。
ゆっくりじっくりと味わっていると、「食べながら聞いてください」と小口が前置きをした。
「口にせずとも、大河さまが姫宮さまのことをどう思っているかは分かっているでしょ」
「私のことを⋯⋯?」
「大河さまの方を見てください」
ごく自然と大河の残した物を頬張りながら、空いている指で差す。
その指先を辿ると、大河は絵を描いていた。
いつもと変わらない光景。見慣れた日常の一部に、大河が加わり、改めて住み始めた頃を思い出す。
安野と何気ない会話をしている時、大河はスプーンを落とした。
それが後にわざと落としたのだと、安野に嫉妬していたことを述べる小口に大河のお絵描き帳を渡された。
特に姫宮のことを描いているそれに何故こんなにも描いているのだろうと思ったりもしたが、今小口が言いたいことが分かった。
そして、口が利けない大河が姫宮のことをどう思っているのかも。
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