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「そうですよね。そうでしたね。⋯⋯小口さん、ありがとうございます」 「はてさて、何のお礼でしょう」 「あ⋯⋯いえ、その⋯⋯」 「まぁ、その話は置いておいて。このままママさまのことがとてもすごいめちゃくちゃ大好きのまま大きくなったら、どうなるんでしょうかねー。それはそれで楽しみですけど」 「小口さんはこのままやってくれるんですか?」 「今のところ特にやりたいことはないので、そうなりますねー。できることならば働きたくありませんけど」 「ま、こうやって自分が作らずとも食べれるのはいいんですが」と玉子焼きを食べながら言う。 変わらずに大河の世話をしてくれるのはありがたいが、このまま任せっきりでも申し訳なくも、自分の立場がない。 複雑な気持ちが胸に渦巻く姫宮のことに気づくことはないだろう小口がこう続けた。 「話は変わりますが、大真面目な話、大河さまの口の代わりになりそうなものを用意した方がいいかもしれませんねー」 「口の代わりになるもの、ですか⋯⋯」 何かあるだろうか。 すぐに思いつかないが、それらしいもののヒントのためにも自ら探しに行きたいところなのだが、姫宮もいつ危険な目に遭うか分からないため、外出は控えるようにと言われていた。 けれども、よっぽど行く用事があるのなら護衛を手配するとも言われていた。 仕事の時ならば分かるが、個人的な理由に付けてもらうほどなのかと思ってしまうが、あのようなことがあったのだ。姫宮も他人事ではない。 しかし、こう言える。 仕事で取り返しのつかないことをしてしまい、この身なんてどうだっていいと身を投げるのと同等のことをしたが、今は愛したい人達がいる。無闇矢鱈にそのようなことはしてはならない。

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