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「ちなみに何を持ってきてくださったのですか?」と尋ねると、「ハニワの立体パズルだ。完成すると立体型のハニワになるのだそうだ」と答えた。
御月堂からの贈り物も面白そうで、今度大河と一緒にやろうと思った、その時だった。
突如、足元でよろけそうになるほどの衝撃を食らった。
急なことに頭が追いつけず、周りで見ていた人達の小さな悲鳴を浴びながら、そのまま倒れそうになる姫宮をとっさに御月堂が受け止めてくれた。
「ありがとう、ございます⋯⋯」
「急にどうした」
「足元で急に体当たりのようなことが⋯⋯」
御月堂とほぼ同時に足元を見る。
すると大河がこちらを見上げていたのだ。
その手にはあの袋に入っていたハニワの編みぐるみを持っていた。
前にもこんなことがあったと思いつつ、姫宮からの贈り物を開けてくれたのだと喜びもあった。
「⋯⋯っ、ま⋯⋯」
酷く掠れた声で辛うじて聞こえた言葉。
それは訴えるように見ていた大河からのようだった。
さっきよりも驚きを滲ませた顔をしていた姫宮にまた口を開いた。
「⋯⋯ま⋯⋯っ⋯⋯ま⋯⋯」
目がこれ以上にないぐらい開くこととなった。
たどたどしくも発せられた"大河の言葉"だと気づいた時、視界が滲んでいった。
「た⋯⋯っ、い、が⋯⋯」
たまらず抱きしめていた。
腕の中にいる愛おしい我が子はあまりにも分かるぐらい身体を大きく震わせていたが、構わず抱きしめる。
心の問題であるから、いつ声が発せられるか分からなく辛抱強く付き合っていかなければならないと言われた。
それが思っていたよりも思わぬところで声が聞けるなんて。
小さな片手が姫宮の背中に回された時、それに応えるようにさらに抱きしめた。
知らぬうちに溢れ出る感情が涙に変わり、震わす背中に大河とは違う手が触れられたのを感じた。
自分よりも大きくて、温かくて、きっとこういうことも慣れていないのだろうと思われるが、それでも彼なりに慰めてあげようとする優しさが伝わり、その気持ちも溢れていった。
元は姫宮のせいで失われた声。それが周りの惜しみない協力、そして大河自身の声を出したい気持ちの結果がこうして見られた。
周りのそれぞれの歓声や、姫宮とはまた違う嬉し泣き、拍手喝采の暖かい最中、姫宮は愛おしい人達を抱き、触れられ、幸せな気持ちに浸るのであった。
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