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第24話 4章 北畠家

「昨日は退院後初めての登校だったんだろ、大丈夫だった?」 「あっ、はい大丈夫でした」 「そうか、初日は金曜で一日だけだったから良かったかな。来週から本格的に始まるね」  蒼の言葉に尚希は頷いた。昨日の感じでは、多分来週からも問題ないと思う。 「今日も疲れてないか? 夕食食べていけるかな?」  いや、体は大丈夫だ。全く疲れは感じない。けれど、初めて来たのに夕食まで……尚希は返事に戸惑った。 「お母さん今日も仕事?」尚久の問いに頷く。 「じゃあ、今日も遅いの?」やはり、頷く。 「だったら食べてけよ。その後送るから」  えっ、送ってくれるの……いいのかなと、尚希は返事に迷っているのだが、尚久の言葉でことは決まったようだ。  これは北畠家の特徴。何事も素早く決まるのだった。  おやつを食べたら春久は眠たくなったようだ。蒼の膝に座って抱きついている。眠たいから甘えているのだ。尚希は、そんな春久を見ながら、赤ちゃんじゃないけど、小さいから甘えたいんだなあと思う。可愛いなあ……そして、お母さんしている蒼はいつも以上に優しそうだと思う。 「ふっ、寝たみたいだな。君は昼寝しなくていいのか」  いいに決まってる! 三歳の子じゃないよ! と思い、ふくれっ面になる。その顔をみた尚久が、ふふっ、と小さく笑う。尚希の顔が益々膨れる。全く子供扱い。僕も子供だけど、三歳の子と一緒にしないでほしい。  尚希は思うだけで、言葉にはできない。しかし、尚希の思いは尚久に伝わっている。それが、尚久にはおかしいのだ。笑いがこみ上げるが、さすがに我慢するのだった。  その後、帰宅した結惟を紹介された。 「あお君となお君の患者さんなのね。うちでは私だけ医者じゃないのよ、よろしくね」  朗らかに言う結惟に尚希は、「よろしくお願いします」と言うのが精一杯だった。  なんてきれいな人なんだろう。間違いなく北畠家は美男美女家系だ。レベルが高すぎる。こんな家に自分がいてもいいのか、場違い過ぎると、尚希は思う。  しかし結惟は、「ご飯食べていってね、うちのご飯美味しいから。ねえ、なお君」と、いたって気さくだ。これも北畠家の特徴。美男美女でエリート一家。だけど固さはない。朗らかで、気さくな性質。これは、雪哉の影響だった。高久の親の代の北畠家は、エリートに相応しい厳格な家庭だった。  その厳格さに息の詰まる思いをしていた高久が、雪哉に惹かれたのは、必然だったかもしれない。

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