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第65話 10章 愛する人の支え
尚希は、早速事の次第を尚久に伝えた。
「それでね、リクルートスーツがいるから、明日買いに行こうと思って」
「そうだな、リクルートスーツってどんなものか、分かってるのか?」
「……? よくわかんないけど、お店で聞けば何とかなるんじゃ……」
全く心もとない。そもそもどこの店で買うのだ。そこから怪しい。しかし、そういう尚久自身、リクルートスーツに詳しいわけではない。就職活動した経験がないからだ。周りにそのような者もいない……と考えていて、思いついた。
「結惟だ! そういう事は、うちではあれが一番詳しいはずだ」
思いついたら即実行、それが尚久だ。
「結惟、明日時間あるか? 買い物に付き合って欲しいんだけど」
「明日、三時過ぎなら時間あるけど、何を買いに行くの?」
「尚希のリクルートスーツ。そういうの、お前の方が詳しいだろ」
「そうね、なお君よりは分かるかも。じゃあ、明日三時半に待ち合わせでいい?」
「うん、了解。じゃあ、頼むよ。尚希、良かったな」
「はい。結惟さん、明日はお願いします」
「こんな感じかなあ――あっ、これいいんじゃない。これだと、入社後もちょっとした場で着られて便利だと思うわよ」
「そうだな、尚希どうだ? 試着してみるか?」
「あっ、そうだね」
尚希は、結惟が見立てたスーツを持って試着室へ入る。
「弟さんですか?」
試着室の前で店員が聞く。尚希を二人の弟と思ったようだ。
「いえ、私の婚約者です。妹にも一緒に見立ててもらおうと思って」
「まあ、そうですか。とても可愛いらしい方ですね」
すると、試着した尚希がおずおずと出て来た。中で会話が聞こえたためか、頬が染まっている。
「まあーっ、良くお似合いですよ! どうですか着心地は?」
確かに良く似合っている。それだけでなく、大人の色気を感じて、尚久はドキッとする。こいつ、こんなに色気あったか、ちょっとやばいな。
「うん、そうね良く似合ってるわよ。これにしなさい。シャツと、ネクタイも合わせないとね。どちらも二枚づつあると便利かな」
「そうですね。そうなさると着こなしの幅も広がりますね。こんな感じがよろしいのではないでしょうか」
尚久をよそに結惟と店員で、どんどん話が進んで行く。
「それでは、お直ししたもの、来週の火曜日にお渡しできますので」
会計は、尚久が支払う。それは昨夜の時点で尚希にも告げていた。最初は反論されたが、「私が買ってやりたいんだよ」と、納得させたのだった。
「よし、無事に買えたな。他に何か買い物はあるか?」
「僕は何もないけど、はっくんにお土産買っていきたい」
尚希の方から、春久を気遣ってくれるのが、尚久には嬉しい。結惟も嬉しそうにしている。
「そうだな、何がいいかな」
「この近くに美味しいケーキ屋さんがあるわよ。ケーキっていうか、シュークリームや、エクレアが美味しいの」
結惟の提案に、三人でケーキ屋へ向かう。
「うわー! エクレアが色々あるんだね。なんか目移りしそう」
「ねえ、可愛くて美味しそうでしょ。色んな種類を買って行こうか」
数えたら、八種類あるので、八人だから丁度良いと、全て買うことにする。
会計で当然のように尚久が支払おうとすると、尚希が払うと言う。
「僕がはっくんに買っていきたいんだ。お願い、僕に出させて」
こうまで言われると、尚久も仕方ないと思う。尚希の気持ちを立ててやりたいと、支払いを任せた。
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