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第66話 10章 愛する人の支え
「お帰りなさい! 三人一緒だったの?」
三人が玄関に入ると、春久が走り出てきた。
「うん、そうだよ。僕の買い物に付き合ってもらったんだ。これ、はっくんにお土産だよ」
「わーいっ! なーに?」
「エクレアだ。尚希がはる君へって、買ってくれたんだぞ」
「えっ! そうなの。なっくんありがとう! お母さまーっ、なっくんがエクレア買ってくれた」
春久がエクレアを持って蒼へ知らせに行く。
「尚希君ありがとう。こんな気を遣わなくていいのに」
「僕もはっくんと一緒に食べたかったので」
尚希の優しくて賢さからでた言葉。僕も一緒に食べたい、そう言えば、すんなり受け入れられる。
「じゃあ、食後のデザートに皆でいただこう。はる君、それまで冷蔵庫に入れておきなさい」
この日の北畠家の食後のデザートは盛り上がった。
尚希の母が亡くなって以来、どこか静かな雰囲気を纏っていた。それが、久しぶりに和やかなものとなったのだ。
「うわーっ、これ全部違う種類なんだね」
「丁度全部で八種類あったので、全集類買ってきました」
「目移りするけど、これはどうやって決めようか」
そう、それが問題だ。誰から選ぶのか――。
「じゃんけんしよう。それで勝った者から選ぶ。公平で文句無しだ」
雪哉の提案で、じゃんけん勝負になる。
「最初はぐーっ、じゃんけんぽん――じゃんけんぽん」
二回目で勝ち負けが分かれた。なんと、蒼と、彰久と春久の三人が勝ち組だ。
「さすが親子の絆の深さ」
彰久が自慢気に言うと、皆苦笑しながら頷く。確かにこの親子はこんな些細なことでも団結している。
結局じゃんけん大会は、彰久の優勝、次が春久で三位が蒼になった。そして、結惟、雪哉、尚久の順。最後のどべ争いは、高久と尚希。
僕がどべでいいよねと思いながらの勝負。皆が二人に注目。
「じゃんけんぽん!」
「うわーっ、父さんがどべ!」
高久が負けたのだ。
「私はじゃんけんが弱いな。今日初めて知ったよ」
高久の人生でどべになることなど皆無だった。例えじゃんけんといえど、少々ショックを感じる高久。
「じゃんけんなんてする機会ないからな。でも楽しかったな」
それには皆同意して頷く。たかがエクレアを選ぶ権利をかけて、皆真剣勝負。でもだから盛り上がって楽しかったのだ。
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