尚希の気持ちを受け取った尚久は、尚希の服を脱がせていく。 　初心な尚希でも、さすがに裸になる必要は分かる。けれど、自分で脱ぐことは、手が固まっていて出来ない。ましてや、尚久の服に手を掛けるなど、考えも及ばない。 　無論、尚久はそんな尚希のことは十分過ぎるほど理解している。だから、どんどん進めていくのだ。 　尚希はされるがままだ。 「きれいだよ――今日の衣装もとても似合って可愛かったが、何も身に付けていないお前が一番きれいだ」 　裸になった尚希を見下ろして尚久が言う。尚希は嬉しさよりも、恥ずかしが勝って顔だけでなく、全身を赤く染める。 　それがまた、尚久の情欲を誘う。 　尚久は尚希に口付け、深く口腔内を弄りながら、手は優しく尚希の全身を撫でるように愛撫していく。 　尚希は口付けの気持ち良さに体の力が抜け、唾液が溢れる。尚久はそれを啜ってやると、そのまま首筋を愛撫していく。尚久の愛撫は徐々に下へと降りて行く。 「あっ……ああんっ……」 　たまらず尚希が喘ぎを漏らす。 　尚久の唇は、尚希の乳首にそっと触れる。薄っすらと色づいて、まだ立ち上がってはいない。ここを愛撫して育ててやりたい。 「あーっ、あっ……ああんっ……」 　尚希には刺激が強すぎて、喘ぎが甘く、強くなる。 　逃れようとする尚希を抑え込み、愛撫を続け、片方の乳首も指で転がしてやる。 　動きを止められた尚希の感応の熱は内にこもり、更に高められ、尚希の男の部分に集まる。たまらず尚希はそれに触れようとすると、尚久はその手を素早く止める。 「だめだ。ここはまだ我慢しろ。このまま乳首だけでいくんだ」 　止められた尚希はもどかしさに身を震わせる。そんな尚希を尚久は追い上げるように愛撫する。 「ああんっ……もっ……もうだめっ……いっ……いくーっ」 「ああ、いっていい」 　尚希は喘ぎながら体を仰け反らせ、その精を放出させる。 「上手に達したな」 　尚久は、まだ震えの残る尚希を抱きしめ、頭を優しく撫でてやる。すると、尚希が抱きついてきた。あっという間に達したことが恥ずかしいのだ。 　尚久にはそんな仕草も可愛らしく思う。そして、尚希の男に触れると、びくっと反応する。 「達したばかりだから敏感だな。ここも可愛がってやるよ」 　尚希は恥ずかしのあまりいやいやをするように首を振る。尚久は構わず、尚希に似て小ぶりで可愛らしいそれを口に含む。 　尚希は驚き、激しく動揺する。しかし、尚久の口の中は熱く、その心地良さに囚われていく。 　気持ちいい――でも、また出る――さっき出したばかりなのに、我慢しないと。 「あっ……だめっ……でっでるーっ」 　二度目の精を尚久の口の中へ放出する。否、放出させられたという感じだ。 　尚久は尚希のものをごくりと飲み干す。 「ふふっ、少し青臭い、お前らしい味だ」 「ええーっ！　のっ、飲んだのっ！？　どっ、どうして！？」 「お前のだからな」 　達した後の気怠さよりも驚きが勝つ尚希に、尚久は平然と言う。何をお前は慌てているのだという態度だ。 「ふっ、普通飲むの？」 「お前のものはな。私のは勿論お前の中に出すぞ」 　お前の中に出す――初心な尚希にもその意味することは分かる。どっ、どうしよう――。 　恥ずかしい――そして少し怖い――。 「夫夫になったのだから、身も心も一つになる」 　そうだろう――という風に目で尋ねる尚久に、尚希は僅かに頷いた。 　尚久は尚希の秘所に手をやる。オメガではなく、ベータのそこは蜜で溢れてはいない。 　尚久はジェルを手に取る。男のベータを女にする時必要な物。尚希が不快さを感じないように、掌で十分に温める。 　温まったそれを尚希の秘所へあてると、ビクッと反応して、尚久にしがみつく。 　大丈夫だと宥めるようにしながら、尚久の指は尚希の蕾を徐々に開いていく。 　ベータの場合、丁寧に解さねばならない。そこがオメガとの違い。 　だが、それが醍醐味とも言える。己が丁寧に解して、己だけを受け入れるようにする。 　指が四本入る。しがみつく尚希の体の力も抜けてきている。　 　そろそろ大丈夫だろうと、尚久は見極める。 　己の既に立ち上がったものを尚希の蕾に、とんとあててやると。つつっと受け入れられていく。 　相性は良いようだ。当然だけど――。 「ああんっ……ああっ……」 　喘ぎを漏らす尚希の頭を宥めるように撫でてやる。 「奥まで入ったぞ。これで一つになった。お前と私は一心同体だ」 　尚希はこくこくと頷く。薄っすら赤くなった目で見上げるその姿は、ひどく煽情的で、尚久の情欲を更に刺激する。 「ふっお前は……私を、アルファを煽るとどういうことになるか分かっているのか」 　尚希は尚久を、訴えるようにして見つめる。尚希も、怖いながらもこの先を望んでいるのだ。このまま、尚久の全てを受け入れたい。 　番になることは出来なくても、身も心も全て尚久に捧げ、尚久の全てが欲しい。 　尚久を愛するが故の衝動的な思いが芽生えていた。 　尚久は動いた。 　初めての尚希に配慮して、初めはゆっくりと、尚希の様子を見ながら――。 　しかし、やがて本能のままに激しく動いていく。 「ああっ……ああんっ……」 　尚希の喘ぎも激しくなる。 　尚久が尚希の奥を突き上げるようにすると、尚希が大きく仰け反る。 　尚久の精が尚希の中へ迸る。アルファのそれは長い。 　尚希は仰け反らした体で、それを受け止めながら、次第に意識が遠のいていく――。 　温もりの中で目覚めると、尚久の腕の中だった。 　尚さん……僕は昨日このまま眠ちゃったのかな――。 「起きたのか」 　尚久が尚希を抱きしめながら言う。 「うん、僕昨日このまま？」　 「ああ、意識を飛ばしてそのままな」 　やっぱり……裸だったはずだけど……恥ずかしすぎる。 「ごっ、ごめんなさい」 「大丈夫だ。気にすることはない。初めてだから刺激が強かったんだろう。段々なれる」 　そうかもしれないけど。昨日みたいなこと、なれるのかな――。 　尚希には刺激が強いどころではなかった。物凄く喘いだのは辛うじて覚えている。それ以上は――恥ずかしすぎる。 　照れてもじもじする尚希が、尚久には可愛くてたまらない。 　からかってやりたい気持ちもあるが、気分を変えてやろうと思う。尚久自身新鮮な風が欲しいと思う。 「風を入れて空気を入れ替えたいな」 　尚久が窓を開けると、爽やかな風がすーっと入ってくる。少しひんやりとして心地よい風。秋の風だ。 「あーっ、気持ちが良いね」 「ああ、とても心地よい風だな。尚希と初めて会った時も良い風が吹いていた。昨日のことのように思い出すよ」 　あの時は勿論、今も尚希は真っ白だが、これから鮮やかに染まっていくだろう。どんな色になっていくのか楽しみだ。 　完結しました。ここまでお読みいただきありがとうございます。 　ベータの恋はオメガバースらしさがあまりなく正直悩みながらの執筆でした。 　何とか完結出来たのは読んでくださる方の存在でした。 　心から感謝いたします。ありがとうございました。