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第1話 繋がりたいな

 たまに、誰かと繋がりたいと思うことがある。一人で湯船に浸かっている時とか、玄関の鍵を閉める時とか。体だけの繋がりだったら、その気になればいつでもできるけど、心も、となれば、これが結構難しい。特に、俺たちのような種類の人間は。  世間でよくある、誰か紹介してくれよって言って、じゃあこの子どう?とか、そんな簡単にいい男を紹介してもらえるわけもないし、皆んなで飲み会とかしても同じだ。  で、結局いつも同じような場所に行っては相手を探し求めている。それがダメとかっていうわけじゃないけれど、上手くいきそうと思っても、そいつは俺の元カレと付き合ってたとか、また逆に俺がそいつのツレとこの間まで付き合ってたとか、そういうのを知ってしまうと気持ちが萎えてしまうことがある。なんか狭い世界でグルグルと相手を取っ替え引っ替えしてる。ゲイは皆兄弟だ、なんて言ってたヤツがいた。  別に死ぬまで一緒にいたいなんて思ったこともないけど、一晩だけの相手っていうのも、なんだろ、ちょっと淋しいっていうのか…つまり俺の性欲が落ち込んできたってことなんだろうか。毎晩でも誰かとやりたいとは思わなくなってるのは事実だし。  じゃあ、ノンケをこっちに引っ張るのもありかもしれないけど、そこまで情熱を傾けられる相手に巡り合ったこともない。この先、もし出会ったとして、互いに気持ちを通わせて、愛の言葉を囁いて、キスして抱き合って、握って、まぁフェラまではいけたとして、アナルもいけるのか…今まで○ンコしか出したことのないところに、男性器を突っ込むのを喜べるのか?いや、喜べるようにしてやれるのか…自信ないな。  そして、今日もいつもの場所『アクト』にいる。   ここに来てもう何年になるだろう。2回目の七夕パーティーで俺の初恋ともいうべき人と出会った。少しガテン系でキスがめちゃくちゃ上手い人。俺に壊れ物注意のシールを貼ってもいいくらい、優しく優しく抱いてくれた。ただ、射精ができる相手を闇雲に探していた頃、拙いテクニックしか持ち合わせていない俺に、男同士の手ほどきを教えてくれた。  でも、その恋も一年も経たないくらいで、終わってしまった。  人生とは、そんなもんだ…。 「レオ君…どうしちゃった?元気ないんじゃない?」  カウンターで一人座ってると、マスターのロビさんが声をかけてきた。 「あぁ?…人生の侘び寂びを感じているんだよ」 「何それ?そんなこと言ってたら、老けちゃうわよ」  いつも、穏やかにしているロビさんも悩むことがあるんだろうか。 「ロビさんは、悩みないの?」 「そうね…目の前のレオ君がどうしちゃったかのかしらって、悩んでいるわね」  さすが、客商売のプロだ。 「あっそうそう。レオ君の元彼?元々彼?どっちだったか忘れたけど、ライトさんがさ、レオ君とよりを戻したいって、ついこの間言ってたわよ」 「ふぅん…」  興味もなかったけど、一応相槌はした。 「その様子じゃ、無理そうね」  自分から浮気しといて何言ってんだって話しだ。本当にそう思ってんだったら、周りに言うより、直接言ってこいよ、この俺にさ。まぁ、言ってきたところで断るけどね。  ハイボールをもう一杯だけ飲んで、その日は、早々に家に帰った。

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