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第10話 桃果汁
「美味しい…桃ってこんなに美味しいんだ」
感動している間にも、お兄さんは残りの半身を四等分に切り込みを入れると種から引き剥がして綺麗に皮を剥いて、皿に入れてくれた。俺はそれも手掴みで食べた。
お兄さんは俺の隣りに座って、美味しそうに桃を食べている俺を嬉しそうに眺めてる。俺は口どころか顎や頬近くまで美味しい桃の果汁まみれになっていた。
一つ丸々俺一人で食べてしまった。本当に美味しかった。幸せだ。
「ねぇ…よかったら、もう一つどう?」
「ありがとうございます。一つで大満足です。ご馳走様です」
美味しいけど、二つはさすがに無理だよお兄さん。すると優しいお兄さんの顔が少しエロくなったような気がした。
「そう?よかった。じゃあ、俺も食べていいかな」
お兄さんは俺の桃果汁だらけの唇を指先で軽く摘むと、その指をペロッと舐めた。
「美味しい」
そういうことね。はい、どうぞお召し上がり下さい。お兄さんは俺の唇にキスをした。いや、キスというより桃果汁を舐めていた。顎や頬も舐めまわされた。口の中も舌を絡ませて、全ての桃果汁をお兄さんに吸い取られしまった。甘くて芳醇だった桃は濃厚なキスに取って代わった。俺が桃を食べていたのと同じ時間くらいお兄さんは俺から唇を離そうとはしなかった。
「うん。美味しかったよ」
お兄さんは満足したようだ。俺もちょっと久々の濃厚キスにうっとりだ。
「レオ君、可愛いね」
「えぇ、恥ずかしいな…可愛いなんて言われたら…」
こんなセリフ言ってる俺が恥ずかしい。
「向こうの部屋に行こうか」
たぶんベッドルールだな。お兄さんは先に行くと、さっき着替えていた部屋の扉を開けっ放しにして、ルームウエアの上を脱ぎ始めた。お兄さんの上半身はムキムキとかではなくて、上質な筋肉で纏われたキレイという言葉がぴったりな身体だった。たぶん自信もあるのだろう。俺に見せつけるように脱いでるあたり…ナルシストか。俺はお兄さんのきれいな身体をじっと見ていると、続けてルームウエアのパンツも脱いだ。真っ裸だ。皮のスリッパは履いている。シュールだ。お兄さんの身体はあの有名な彫像のように美しかった。ペニスの大きさ以外は…お兄さんのは大きかった。
「ねぇ、来ないの」
お兄さんの声には少し苛立ちがあったけど、俺は見惚れてしまっていた。もう少し見ていたかったけど、俺は椅子から立ち上がってベッドルームに向かった。お兄さんは俺が扉近くまで行くと、なんと扉をバタンと閉めてしまった。あぁ、早く行かなかったから怒ったんだな。ちょっと面倒臭いタイプか。まぁ、日頃から自分の思うように周りにお膳立てしてもらっているお坊ちゃんなんだろう。仕方ないか。素直に謝っても機嫌が直るのかもわからんし、ここは奇策だ。
俺はその場でお兄さん同様真っ裸になった。そして扉の前で正座した。ここからは長期戦になるかどうかはお兄さん次第だ。天の岩戸だな。
静かに待っていると、10分もしないうちにカチャリとお兄さんが扉を開けた。
さぁ、ここからだ。
「あの…ごめんなさい。僕、お兄さんを怒らせることしちゃったみたいで」
お兄さんは裸で正座している俺にかなり驚いたようだ。すぐに俺の傍にしゃがみ込んだ。
「…レオ君。ごめん。俺も大人気なかった。君が可愛かったから、つい意地悪してみたくなって…こんな硬い床に座って…ごめんよ」
お兄さんは抱きしめてくれた。いい匂いがした。お兄さんは俺を立たそうとしたが、立てなかった。だって足が痺れてしまったんだ。想定外だ。
「レオ君、どうしたの?」
「あ…足が痺れて」
お兄さんは微笑みながら俺のおでこにキスをすると、俺を抱き上げた。意外に力持ちだ。
「君は本当に可愛い子だな」
お兄さんは俺をベッドの上にそっと下ろすと、足の甲を指で突いた。
「あぁ。だめ…それだけは許して」
マジでだめだ。でもお兄さんはなんか楽しそうだ。誰のせいで足痺れてると思ってんだよ。
「もう一度さ、お願い許してとか言わせてみたいな」
俺は口を尖らせて、お兄さんを上目遣いで睨んだ。
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