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第16話 聖夜までのカウントダウン

店頭に飾られたサンタや雪だるまの置物に、LED照明が施されたエントランス中央の巨大なツリー。 ショッピングモールの雰囲気はクリスマス一色に染まっていた。 久しぶりの休日に俺がここまで出向いた理由は二つ。 一つは自炊用の食材の買い足し、もう一つはクリスマスプレゼントの偵察のためだ。 小児科では毎年職員による話し合いで品物を決め、経費から購入している。 確か去年は無難にマグカップにしたのだが、橋本さん曰く今年は少し変わった物にしたいとのこと。 来週の会議までには案を考えておかなければならない。そのためには最近の子供の流行を知る必要があると思い、今に至るという訳だ。 適当な文房具屋に入ると『プレゼントにおすすめ!』と宣伝されたコーナーがある。 動物型の付箋やポップなイラストのテープは女子ウケが良さそうだし、磁石で吸い取る最新の消しカス回収器なんかは男子達に喜ばれそうだ。 印鑑付きのボールペンまであり、これは普通に仕事用で欲しい。 (…高校生には合わねえかな。) プレゼントを配布する対象は一応18歳以下となっているが、やはり大多数を小学生が占める以上彼らを基準に選ばなければならず、高校生の凪には少々幼稚に見えてしまうかもしれない。 かといって直接欲しい物を聞いたところで凪のことだ。「そんなに気を遣わなくて大丈夫だから」とか言って断るに違いない。 ここは俺が勝手に決めてしまおう。 スマートフォンを取り出し『男子高校生 プレゼント』と検索をかけてみる。 入院中、そして退院後した後でも長く使えそうな物はないだろうか。 (これいいかもな。あいつ景色とか見るの好きそうだし。) 星空観察をした時、本人は口に出していなかったが屋上からの眺めに夢中になっていたのを思い出した。 凪の病院での生活が少しでも形として残るように。 機能やデザインを比較して、個人的にしっくりきた商品の箱とメモリーカードを携えてレジまで持っていく。 ラッピングのサービスまでしてくれるそうなのでお願いした。 「頑張ってくださいね。」 手際よく商品を包んでいきながら女性店員は言う。 「…喜んでくれればいいんですけどね。」 「大丈夫ですよ。これだけ拘って選んでくれたプレゼント、私だったら凄く嬉しいです。」 多分恋人に渡すのだと思われているが、全部見られていたとなると正直恥ずかしい。 「ありがとうございます。」 最後に緑色の紙袋を受け取りその場を後にする。 店員は背中を押すように俺を笑顔で送り出した。 (…買い物行くの忘れてたな。) 危うく本来の目的を見失うところだった。 うろ覚えのジングルベルのBGMを聞きながら先を急ぐ。 凪の反応を想像すると不思議と足取りが軽くなる。 迫る聖夜の日をこんな気持ちで迎えるのは初めてのことだった。

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